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zoom RSS 山登ってみよう【縦走東海自然歩道・熊〜秋葉山〜犬居城・後編】

<<   作成日時 : 2016/11/02 22:18   >>

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画像 天竜川左岸に渡った時点で12:05。歩き始めから約3時間が経過していることになる。消耗と言うほどに消耗はしていないが、ここから700m以上の山登りが始まる。休憩に適したところはなかったけれど、いよいよ山に向かっていくと言う階段の登り口に、簡易なベンチのようなものを見つけたので、座って人心地着いた。体力が十分にある状態なら、1時間で600mほどは登れる。今このコンディションで700mの登りとなると、1時間半で山頂付近の秋葉神社上社まで行ければ御の字か。

 性根を据えて、登りにかかる。初めのうちは、これまでとさほど変わらず舗装された道が続いたが、それも20分程度で終わりを迎えた。最後に見かけた東海自然歩道の案内板には、「車道を50mほど進むと山道に入り、『秋葉神社上社』『秋葉寺』に向かいます。歴史ある秋葉信仰の石灯篭が点在する長い登山道は急坂が続きますので、無理をせず慎重に進みましょう。」とあった。ちなみに秋葉ダム前後から指導標の意匠が変わり、次の経由地までの距離・所要時間は基本的に表示されなくなっていたが、目指すべき地点としては秋葉神社上社と同下社が常にセットで表示されるようになっていた。下社は、下山後の春野町に位置しているようなので、大一番となるのはやはり上社までの登りか。

画像 急坂と言われた古くからの登山道は、楽な道ではないけれど、レクリエーション登山のコースで時折出くわすような、激登りの坂道ではない。その辺りは、痩せても枯れても歴史ある信仰の道といったところだろうか。その分、横に歩く距離が長いことは予想される。石灯篭も、確かに時折姿を現すのだが、どれもこれも笠のない独特の形状をしている。はじめは、時を経るうちに剥離してしまったのだろうかと思ったけれど、どうもそういうわけではなさそうだ。道は九十九折に折り返し、時に林道と交わりながら、淡々と高度を上げていく。

 山裾から見上げた稜線は、それほど高いところに見えたわけではなく、秋葉山山頂もそこから極端に逸脱して高いわけでもなさそうだったが、一本調子の登りは1時間ほども続いた。一旦傾斜が緩んだのは、秋葉山を目指す自動車道路の脇に出た時だったが、ベンチとテーブルの休憩スペースがある先は、踊り場のない一本調子の木段がまだしばらく続いている。神社の境内までは、もうそんなに距離もないはずだ。道沿いに残る石垣などは、さしずめ神社につながりのある昔の施設の名残なのだろうが、終わりが見え始めてからが意外と長い。気が付けば、林床の道はかなり薄暗くなってきている。天気が崩れ始めている…というよりは、それなりの高さがある山のため、低い雲が山頂付近を覆っているらしい。

画像 13:56、とにもかくにも神社の駐車場にたどり着いた。火伏の神様として、特に東海地方では有名な神社なので、もっと多くの参拝客がいるのかと思っていたが、広い駐車場には10台程度の車が止まっているばかりだ。まあ、シーズンも時間帯も半端なので、その影響があるのかもしれない。

画像 とにかく、お参りをしていくことにする。駐車場から社殿までがまた思いのほか遠い。途中にあった秋葉茶屋の前で自販機を見つけ、そこで一服したので相応の時間も取られたのだけれど、それでも上社の社殿にたどり着いた時、時計は14:14を示していた。

画像 秋葉神社の祭神はヒノカグツチ。母神であるイザナミを焼き殺した火の神様だが、紆余曲折を経て火伏の神様と言うことになっている。果たしてその種の願掛けを聞き届けてくれるかどうかは謎だけれど、天気の安定と、無事のゴールをお祈りした。その後は当然先を目指そうとするのに、神社の敷地内であるためか指導標はめっきり姿を消してしまい、進むべき道がはっきりしない。一応、上社の社殿の下方から、駐車場とは反対方向に延びる道を見つけたので辿ってみるのだけれど、やっぱり道標となるものが何もない。立派な山門をくぐり、ここまで来れば指導標の一つくらいはと思って見ても何もない。こちらで間違いはないだろうがと思いながらも、不安を抱えながら先へ進む。何が問題だと言って、ここまでで結構下っている。間違いだとなれば登り返さなければならない。手持ちのガイドによれば、次は秋葉山三尺坊と言うお寺に行きつくはずだ。上社からは20分ほどの距離とある。20分歩いてそれらしきものにたどり着けなければ、この道は間違いだ。

画像 下りはじめからのリミット20分が過ぎようとしていた。いよいよこの道を選んだことを後悔し始めた時、行く手に見慣れた静岡仕様の東海自然歩道案内板が立っているのが見えた。そしてその対面に、寺務所風の建物。ここが目指す三尺坊だった。現地の案内類では秋葉寺(しゅうようじ)となっているが、同じことだ。そこそこ立派だが、境内に人気はない。案内板を見る限り、秋葉神社下社までは105分とある。その通り歩いたとして、ギリギリでバスの時刻に間に合うといった所か。道に間違いがないことが分かると、かえって帰路のことが気になりだしてきた。気持ちは焦るけれど、春野町に向かって下る道は、秋葉ダムからの登り以上に傾斜がきつい。標高を100m下げるのにかかる時間が10分少々。一気に進捗を稼ぐ中、14:52に富士見茶屋跡を通過。真新しい看板が出ている。

 ここは表参道の三十町目。往時は富士山をはじめ遠州灘や天竜川、そして犬居の町並みまで見渡せる景勝地でしたので、数多くの秋葉道者が店に立ち寄ってくださいました。しかし昭和十八年三月の大火で家屋が全焼、茶屋としての歴史の幕を閉じました。その後住居を再建して暮らし続けるも、寄る年波には勝てず昭和六十二年に山を下りることになりました。
 いまは、思い出の詰まった母屋を残すのみ。


 最後は、元の主だったと思われる人の名で締めくくられている。かなり高齢らしい。看板の日付を見ると、今から約1年前の平成27年11月8日に立てられた看板のようだ。昔からの茶屋跡に過ぎないのであれば、残された昭和中葉の建物と看板を一瞥して通り過ぎていたのかもしれないが、一人の人生を見る思いがして、妙に厳粛な気持ちになった。

 さらに30分ほど歩いて、山麓に行きついた。秋葉ダム側の登山口は、本当に登山口と言う雰囲気を漂わせていたが、こちらはこちらで参道入り口と言う感じである。石畳の道沿いには、雰囲気の悪くない古民家風カフェなんかもある。ただ、門前町と言うほどには大規模なものではない。すぐに無愛想なアスファルト舗装の道に出た。本日最も何の変哲もない、生活道路と言う感じだ。10分ほど行くと秋葉神社の下社があったが、食指が動かない。道路側から見える石段が結構なものだったのもあるが、何となく上社がメインに思われ、こちらはまた機会のある時でも良いかと思った。まあ、この辺りに来るチャンスも、そうはないだろうが。

 時刻は15時半。ここから犬居城まで足を延ばすと、16時過ぎにあるバスには間に合わなくなりそうだ。下社を過ぎて間もなく、東海自然歩道は再び山手に入って行く。バス停のある犬居の中心市街に行くのなら、下手の道を行くべきところだが、それなりに車が通る割に細い川沿いの道だったこともあって、山側に入って行った。どんどん高台に上がって行くが、次の行程もあるし、犬居まで詰められるだけ距離を詰めておいて、そこから街中に向けて離脱しようか。そう考えたのが間違いだった。

画像 最初のうちはまだちょっとした集落の中の道ではあったけれど、やがて地道に引っ張られ、高度もぐんぐん上がって行く。とてもではないが、ここから街中にエスケープなど、できなさそうだ。最後のチャンスと思しき春野ふれあい公園への分岐に差し掛かった時の時刻が、15:53。何たること、犬居の町ははるか眼下に見えた。犬居城があるのは、天竜高校春野校舎の裏山だという話だが、そのグラウンドから聞こえてくる少年少女らの声も、えらく遠くに聞こえる。それもそのはず、犬居の中心部から東海自然歩道の延びる尾根道までは、比高差でちょうど100mほどある。そもそも、春野ふれあい公園側に下って行ったところで、首尾よくバス停までたどり着けるかどうかは疑問だ。時間はない。ちょっとだけ迷った後、毒を食らわば皿までの精神で攻め継続を決定。この時点で、16時台のバスに乗ることは諦めていない。思いのほか急峻な犬居城への山道を、これまで以上にペースを上げて猛然と登って行く。

 しかし、ダメだった。犬居城の主格部だったと思しき、展望台付きのピークにたどり着いた時点で、時計は16:07を表示していた。バスは、もうだめだ。猶予は、あと10分もない。次に来る18時近くのものを待つしかない。軽い敗北感を味わう。

画像 犬居城のトップは、展望台がある以外にこれというものは何もない。役小角をかたどったと思われる石像はあるが、これは城と全く関係のない代物だろう。つまり、戦国時代の山城跡としては残念な部類に入る。これでは、以前に攻めたことがあったとしても何ら記憶には残らないはずだ。展望台の1階部分には「犬居城址望楼建設記」と題された碑文はあったが、昭和築城が盛んだった時代、地元はこの展望台を作ることに熱を上げ、完成したことをもって良しとしたのだろう。一応のところ、東海自然歩道名義で犬居城址の解説と簡単な縄張り図…と言うよりは鳥瞰図があったが、史跡公園として整備されようという気配は感じられない。

 いろんな意味で意気消沈しながら、城跡を下る。見た所、登りの道の途中には城郭遺構として顕著なものを見つけられなかったが、犬居橋側に下るこちらの道の途中には、空堀や、曲輪の跡が見受けられた。東海自然歩道からは少しく距離があり、かつそこに通じる正規の散策路や解説板の類がないのは寂しい限りである。やがて、そうした山城跡の痕跡も姿を消した。ひたすら急なだけの坂道を下りきると、茶畑の片隅に出た。道なりに歩いて行くと、高架で国道362号を跨ぎ、さらに362号へと降りていく。東海自然歩道はこの先、わずかの間国道沿いを伸び、その後は新宮池を目指すべく信州街道に入って行く。が、今日の歩行は、気田川にかかる犬居橋の手前で打ち切ることにしよう。

 方針を決め、国道から外れる犬居の家並みの中に向かって歩いて行く。バス停はこちらにある。ふいに、終着点に向かって歩き始めた私の背後から、バスが近づいて生きた。もしかして、途中で遅れが生じてもともと乗るつもりだったバスが今やって来る事態になった?とにかく、数百m先に見えるバス停まで全力疾走。ここ数回の歩行と違い、体力を使い切るまで過酷な歩行ではなかったので、思ったよりスピードが出る。そして、間に合った。振り返ってバスを見る。袋井駅行!乗りたかったバスと違う。たぶん、走る様子から私がバスに乗る気満々であるように見えたのだろう。バスのドアが空き、運転手氏から「乗ってきますか」と声をかけられた。我ながら、照れ隠しなのか何なのかよく分からない正体不明の苦笑と共に、首を振る。

画像 どうやら、秋葉バスと言うのがあって、これが袋井駅まで走っているらしい。私が乗りたかったバスは、遠鉄バス。目指すは、出発地点となった遠鉄西鹿島駅。袋井駅はJR東海道線の駅なので、全く方向が違う。なのだけれど、今のタイミングから袋井駅を目指したなら、18時直前のバスで西鹿島駅に向かい、そこからさらに浜松駅に移動するよりもはるかに分が良かったのではないか。1時間半以上の待ちと言う事実を突きつけられ、遠鉄バスのバス停にぽつねんと佇んでいると、そう思えてならなかった。気温もだいぶ下がってきている。止っていると寒いくらいだ。ある程度脚が休んだのを潮に、再度方針を変更し、東海自然歩道歩行をもう少しだけ前進させることにした。と言っても、国道362号を外れることは、バス路線を外れることを意味する。犬居橋を渡り、若見橋を見た後、それらしきバス停がないのに不安を覚え、結局瑞雲寺前の犬居郵便局停まで引き返した。瑞雲寺は、犬居城の城主だった天野氏の菩提寺なのだそうだ。

 すっかり暗くなった山間の街で物思う。秋の日はつるべ落としの言葉そのままに、すっかり日暮れが早くなった。次の区間は帰りの脚の関係で、今日の続きから大井川鉄道家山駅までを歩かざるを得ない。距離の長い山道歩きと言うのも手ごわいが、昼が短いとそもそも日のあるうちにゴールできるか。怪しいものだ。この区間への着手が遅くなった恨みはある。来春、例えばゴールデンウィーク辺りに歩く計画に変更せざるを得ないかもしれない。

 思えば、終盤に変転の多い歩行となった。こういうケースは珍しい。秋葉山までの地図読みはおさおさぬかりなくやったつもりでいたのだけれど、最後の最後で犬居城があるのを比高20〜30mの丘程度とたかをくくり見誤ったのが敗因だったか。バスの本数については良い意味での読み違いもなく、17:53きっかりに到着した。浜松駅への到着は19時を回った。ここから鈍行で名古屋を目指そうとなると、帰宅は21時を過ぎる。それなりに体力を消耗した後、これはありがたくない。痛い出費となるところだが、私の脚は新幹線の切符売り場に向かっていた。

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