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zoom RSS 【不知火地方都市】水俣の博物館を熱く語る(水俣病資料館)

<<   作成日時 : 2017/03/19 11:00   >>

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画像 水俣で目指すのは水俣病資料館である。最近どうだかは知らないが、私が子供の頃、小学校の社会の教科書では公害病のことが取り上げられていた。四大公害病などと言われるものがあって、水俣病、第二水俣病(新潟水俣病)、イタイイタイ病、四日市ぜんそくがそれだ。それぞれの病気の症状まで詳しく踏み込むものではなかったけれど、これらの中でイタイイタイ病はインパクト抜群で、罹患者は、ちょっとした衝撃・振動に痛みを感じ、まともな社会生活を営むこともできないと言うのに恐怖を覚えた。対照的に、水俣病だけはその症状がよく分からなかった。正直言って今でもその症状については不勉強な状態が続いていたのだけれど、この資料館がその閉じていた眼を開かせてくれた。水俣病は、端的に言ってしまえば、有機水銀によって脳の神経系が侵されることによって生じる。感覚の鈍麻、視野の狭窄などから始まり、症状が重くなってくると狂騒状態に陥り、死に至ることもあるという。およそ公害病と呼ばれたものに共通することなのだけれど、水俣病の場合、水俣市で工場を操業していたチッソ株式会社が水俣湾に工場排水を垂れ流したのがすべての元凶となった。

 展示物は伝える。かつて水俣市の面する不知火湾、すなはち有明海の沿海は、豊饒の海と呼んでも差し支えないほど多くの魚が取れる漁場だったのだけれど、波が穏やかだったことから有機水銀によって汚染された排水は比較的狭い範囲にとどまり、まずそこに生息する魚が汚染された。そして、生物濃縮による影響が、それらを食していた地元の漁民などを中心に表れてくる。実はかなり長い間、この奇病の原因が特定されることはなかったのだという。初期の頃には毒々しい色の排水が海に流れ込んでいたが、後にその色を発する物質だけは除去されるようになった。しかし、有毒物質を含む水は依然として排出され続けた。また、当時の水俣市はチッソの企業城下町の様相を呈していたことから、この会社の屋台骨を揺るがしかねない一大不祥事への反応は微妙なものを含んでいた。つまりは、企業への擁護、さらに行き過ぎたものとなると被害者への差別や誹謗中傷などが始まったのだという。

画像 それでも、いちおうは被害者への賠償の道筋がつけられ、汚染された海への対策も取られるようになったが、前者はまだ道半ば、というか現在の医療で水俣病の完治は望めないから簡単に片が付くようなものではないし、後者も同様である。汚染された海水や海底の泥を封じ込めるための工事は20世紀の終わりころまでかけて行われ、その成果なるものが、今日この資料館にたどり着くまでに歩いてきたエコパークなのだという。今はきれいな都市公園然としているが、汚染海域を囲い込み、上から土砂で蓋をした状態になっている。幸か不幸か、排水が広範に拡散しなかったからこそ取れた措置なのかもしれないが、かつてのチッソは、JNCと名を変え、公園を見下ろす高台の上に今も残っている。通常の操業を続けるとともに、被害者への賠償を続けるための部門が設立され、分業制のような形を取っているということだ。公園には陰惨さのかけらも見えないが、ふと丘の上の工業プラントに印字されたJNCの3字を見ると、何とも言えない複雑な気持ちになる。現在、世代交代が進み、水俣市内にも自身が水俣病に侵されたという人がどれほどいるのかはわからないが、それは確実に存在するのだ。資料館にあった、患者が現在半年間に消費する症状緩和のために消費した膨大な量の医薬品が思い出される。

画像 無料施設なので資料はパネル展示が中心だったけれど、インパクトのある展示物には感銘受けることしきりだった。ただ、今回も残念ながら時間が潤沢にあるとは言えない。資料映像を視聴して行く時間も取れないようなありさまで水俣駅に戻るも、もともと予定した列車に乗り遅れ、一本遅れで八代に向かう。熊本県に入っているとは言え、水俣から八代は意外と遠い。八代駅にたどり着いたのは、17時近くのことだった。八代城は、八代市街の真ん中と言って良い場所にある。駅からはちょっと距離があり、城跡に着いた時には、もはや黄昏が近かった。

つづく

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