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zoom RSS 山登ってみよう【縦走東海自然歩道・犬居〜家山・後編】

<<   作成日時 : 2017/05/30 22:02   >>

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画像 大光寺を発って10分ほどで始まる登山道。長くはなさそうだが、思ったよりも急登を強いられる。ほぼ休みなく4時間近くを歩いているので急坂はしんどいが、大光寺奥の院を過ぎ、12:18に鳥居沢山山頂に到着。樹林の中の、展望のまったくない地味な山頂だ。ベンチとテーブルがあるのでとりあえず休憩。リュックサックの中から今日の予定行程を記した手帳を取り出す。おおよそ計画通りだ。ただ、一つの情報が気になる。ゴール地点の家山駅を出発するのは17時半を予定していたが、このままの進捗だと15:15の金谷行に間に合うのではないか。頑張ればギリギリ間に合いそうな、微妙な時間帯である。金剛院から3時間ならまだ余裕があるのだが、残り15qを3時間で歩く。山の中なのでどうなるかはわからない。が、やってみようかという気になる。15時台に帰路につければ、帰りの新幹線代は浮かせることができそうだ。それでなくても今回宿泊費が発生しているので、出費を削れるならそれに越したことはない。

 再び歩き出す。緩やかな登山道は、再び林道と絡み、40分ほどで平松峠に至った。バイクが走り抜けていく、細い峠道だ。ここまで下り一方の山道なのにさほどスピードが出なかったのは、例によって靴擦れが足を痛めつけてきたからだが、対策をしたせいか、足が慣れてきたのか、以前ほどひどい痛みはないので、この先も頑張ろうと思えば頑張れそうだ。根本的には、今日くらいのコースならばちゃんとした登山靴よりトレランシューズのほうが向いているのではないかと思い始めてもいるけれど。

画像 とにかく、金剛院を目指す。12:59に「大日山参道」の石柱の傍らを通り抜けた。しかし、ここからお寺までが長い上に、地味に登り続ける車道となっている。特に急いでいるのでなければ普通に歩ける程度の登り勾配なのだけれど、急ごうとしてペースを上げると、相応に疲労が蓄積されていく。境内で唯一明治時代の大火を免れたという山門にたどり着いたのは13:12。なかなか雰囲気の良い山門だ。ただ、あまりじっくり鑑賞している余裕はなさそうだ。ぐるりを一瞥した後、境内に進む。

画像 このお寺はその昔、東海自然歩道の旅人に対しても宿坊を開け放っていたと、手持ちのガイド本に記述されている。しかし今はそんな時代ではなくなったようで、無住のお寺となっているという話を聞く。本堂に隣接する横に長い建物がその宿坊なのだと思われた。まったく放棄されているというわけでもなさそうで、ガラス戸が大きく開け放たれている。ただ、人の気配もない。山麓に暮らす関係者が、日中の間はやってきてメンテナンスをしているような感じである。お寺自体の歴史に比べれば取るに足らない短期間のうちの変化なのだろうが、東海自然歩道を取り巻く状況の移ろいを、否が応にも感じさせられる。ちなみに件のガイドでは、今日私が歩くコースは金剛院宿坊に一泊しないと厳しい区間としている。今では境内で野営というわけにはいかないだろうが、本当に進退窮まったら、軒先だけでも借りて野宿するしかないのだろうかと、そんなことを考える。野営用の装備を持っていようと、静岡県コースのように舗装された半生活道主体の道では、適地を探すのも容易ではなさそうだ。

 金剛院の直後、本コース最後の登りがある。大して長くはないものの、それでも100mほどを登り返すことになり、若干飛ばしてきた足には堪える登りだ。次第に歩調が遅くなっていくとともに、なんだか急ぐのがあほらしくなってくる。もともと今日の行程は17時半までの決着を意図したものだったし、それを成立させるための前泊だったはず。ここまでの進捗は、それを望むには十分すぎるほどのものだ。この上15時過ぎのゴールまで目論むのは欲張りすぎではないか。無理して飛ばすより、自然体のペースでゴールを目指したって十分ではないか。考え直し、急ぐのをやめた。

画像 もっとも、金剛院から家山に下る区間には特別目を見張るほどの見どころもない。どちらかといえば、これまで歩いた静岡県コースの中でも最も地味だ。急な山道を下り、放棄された茶畑やビニルハウスのある一画を下り、なお薄暗い林の中を行く。道中、それこそ南アルプスの名のある山なのではないかと思しき雪山が遠望できたり、家山周辺のものなのだろう街並みを見下ろすことができたり、多少の変化もあるけれど、一瞬だけのあだ花という感じがする。面白みのない長い下りが続く。一般の自動車が走る用事のないような道だが、それでも下部は車道規格だ。

 一度だけ、こんな場所でパトカーとすれ違った。何の用かと思ったが、もしかすると不法投棄の監視のパトロールを行っているのかもしれない。東海自然歩道の沿線が不法投棄の温床となっていると思しき光景は何度か目にしてきたが、実際パトロールが行われているらしい場面に出くわしたのはこれが初めてのような気がする。島田警察の頑張りに頭が下がる。と同時に妙なことを考える。おかしなところで野宿をしていようものなら、それこそ警察に不審尋問されそうだ。今日のコース、タイムアップの可能性を視野に入れる中で、野宿とか野営とか言った発想が幾度か脳裏をよぎったが、やはり現実的ではなさそうだ。ちなみに、本当に進退窮まったらタクシー呼び出しも考えていたけれど、それを判断する金剛院付近のコース最奥部は、それも簡単ではなさそうな山深さだというのが、歩いてみて実感したところ。こういう場所に限って、東海自然歩道は純然たる徒歩道となっていたりして、タクシーは容易に麓から近づけないのだった。昔でいう森町から来てもらうか、家山にはタクシーが常駐していないらしいので金谷から来てもらうことになるのか、そこはよくわからないが、とにかく迎車だけでも金剛院まで1時間くらいはかかりそうだ。

画像 15:02、八垂の滝に到着。遠望する位置に休憩所があったので一服入れた後、道路の脇でひっそり流れ落ちる滝を見物する。その名は多分、滝が八段くらいになっているところに由来するのではないかと見た。阿寺の七滝と同じような起源説だが、例によって八段あるかどうか数えてみても、そういう感じには見えない。

 家山駅を目指して最後の頑張りどころだ。山上を歩いていたときは意外と感じなかったが、下界に降りてくると暑さが堪える。予報では30度まで上がるという話だったので、暑いのは当然と言えば当然か。最終目的地である野守の池までの約40分が、実際の距離以上に遠く感じられた。最後の最後に消耗しきった状態で池にたどり着いたのが15:41。遠くから汽笛のようなものが聞こえてくる。大井川鉄道を走るSLのそれであることは想像に難くない。ただ、SLは予約制なので、どのみち帰りの足には使えない。あまり気にせず、最後に残った野守の池の周回に入る。

画像 野守の池は、かの夢想国師と遊女・野守の悲恋伝説を伝える池なのだそうだ。南北朝時代を代表する高僧・夢窓疎石には、京都仏教界の大物というイメージがついてまわるけれど、意外にも諸国を遍歴した人でもあったのだそうだ。ここ家山にも足を運んだことがあったのかもしれない。ただ、野守の伝説は真実だったのか否か、確証はなさそうだ。夢窓疎石を慕って京都からこの地まで追って来たという野守は、恋に破れ、この池に身を投げたと伝えられている。一周は数百mほどだろうか。萎えてきた足にはなかなか辛い周回となる。足裏も痛ければ靴擦れも痛い。せっかくの憩いである水場も漫然と眺めながら一周し、最後に小高い丘の公園をやり過ごして家山駅にたどり着いた。16:04のことだった。8時間歩き詰めだったことになる。

画像 えらく年季の入った駅舎が佇んでいた。その古さゆえに、映画やドラマの撮影などでもよく使われるのだそうだ。が、この駅のすごいのは、外観が古いだけでなく、内装も昭和40年代くらいのまま止まってしまったような感じになっていることである。その駅舎で、帰りの列車を待つ。まだ、1時間以上の待ち時間がある。駅舎の中に燕が巣をかけており、親鳥がせっせと雛に餌を運んでいる。なんというかいろいろなものが、現代的ではなく不思議なノスタルジーがある。事実上の足止めとなるのは喜んでばかりもいられないが、こういう時間の過ごし方も、これはこれで悪くないのかもしれない。

画像 列車の時刻間近になってホームに出てみる。ホーム上にあった古ぼけた駅名板と思っていたものは、驚いたことに東海自然歩道と書いてあるようだった。判読困難だが、野守の池、大日山金剛院、「八」そして「峠」とも。八垂の滝、平松峠なのだろうか。いずれにせよすべて今日辿ってきた道である。この先進む道に関することは何も書いてなさそうだ。東海自然歩道は間もなく、大井川を渡る。大井川は駿遠の国境だった。ついにと言うかようやくと言うか、静岡県も半分をクリアしたことになる。ただ、この先の旅はどんどん苦しくなっていく。道のりが険しくなるという意味ではない、名古屋を離れて、アクセスがどんどん厳しくなっていく。短く刻んで前泊を避けるか、前泊してでも一回にたくさん歩くか。それとも前泊せずにたくさん歩く冒険に走るか。静岡最後の山場は竜爪山になると踏んでいる。そこに照準を合わせ、歩幅を合わせようとなると、この先のコースコーディネイトの幅はそんなに大きくはない。

 まあ、それは改めて考えよう。今日は疲れた。駅舎のイメージに反して割と今風な大井川鉄道の電車に乗り金谷駅へ。そこでJRに乗り換え、掛川からこだまに乗って名古屋に引き上げた。


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山登ってみよう【縦走東海自然歩道・犬居〜家山・前編】
 ついに、真に必要と感じて前泊してしまったなあと思う。東海自然歩道の旅は、犬居まで歩を進めたが、その先は適当なエスケープポイントが存在せず、大井川鉄道の家山駅まで約33kmを歩くよりない。それも、林道主体とは言え山の中をである。静岡県によれば、一応の中断ポイントとして中の在家バス停が示されているが、運営会社であるはずの秋葉バスのサイトを見ても、バス停の存在自体が確認できない。よしんば存在していたとして、家山まで歩くのより3q程度の短縮効果が得られるに過ぎず、実用性に乏しい。下手をすれば、道... ...続きを見る
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2017/05/30 22:03

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