ディープ・ダンジョン〜夕庵〜

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zoom RSS エターナルスランバー・その3

<<   作成日時 : 2017/05/09 21:13   >>

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 能登半島にはのと里山海道という自動車専用道路が通っていて、県都金沢と、七尾市や輪島市、珠洲市と言った能登半島の主要都市を結ぶ役割を果たしている。かつては能登有料道路という味もそっけもない名前だったが、2013年度をもって無料化されたことから、現在のような通称名で呼ばれる一般道路になった。建設費用の償還が完了したからとかではなく、北陸新幹線開業に連動するための動きだったのだそうだ。二日目の旅は、こののと里山海道も使いながら、能登半島の先端・珠洲市狼煙まで移動した後、富山県を通過して岐阜県は平湯温泉を目指す計画だ。

 初日に名古屋から金沢まで一日かけて移動しつつ、五か所の経由地を通過したのとは対照的に、せわしなく移動し続けるような日となる。何せ、金沢から能登半島先端部まで百数十qほども離れている。出発は、前夜からの心配もよそに計画通りのタイミングとなったが、それでもサクサク動くに越したことはないだろう。今夜の宿は、そもそも予約を入れていない。まあ人間が眠るところを確保するだけなら心配するには及ばないだろうが、車の置き場所に困ることにならないかと、またしてもそこだけが心配だった。

 出発前夜に見ていたワイスピ2を思い出しながら、能登の地を進む。ブライアンやローマンのようにとは言わない。スーキーモードくらいで頑張る。ワイスピ随一の痛車使いであるスーキーは、愛車のモニターにもオリジナルのキャラクターを表示させ、アクセルをべた踏みしているときにはキャラクターの表情が変わるという走りとは関係ない部分で凝った改造を施していたが、気持ちはあんな感じである。だからと言って能登の田舎道、そんなに飛ばすわけにもいかないのだが、何せ信号がほとんどない。7時に金沢を出発して、9時半に白米の千枚田に到着した。これまで能登半島一周をするときは、いつも七尾湾側をスタートして、内浦→外浦と回っていたように思うが、今回はその逆を行っている。最終的に富山湾岸を伝って富山平野に抜けなければならないからだ。ただ、この道順はあまり面白くないようだ。巌門や能登金剛など、海沿いルートを選べば違ったのかもしれないが、羽咋でのと里山海道を降りてからはひたすら国道を行ったから、一番盛り上がりが欲しいタイミングに田園地帯の風景ばかりが続いた。一瞬、観光地化著しい輪島の市街地を通った後に一休みだ。白米千枚田に来るのも何度目かわからないが、最近はまた世界農業遺産と言うのに登録されたとかで鼻息も荒そうである。

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画像 しばしの休憩の後、さらに郊外にある上時国家へ。ここに来るのも割とありふれたパターンである。昨日の右近家に続いて古民家見学。いや、ここの場合、単に古民家と言って良いのかどうか判断が難しい。本物の平氏の末裔が土着化して庄屋となった家で、後年加賀能登の領主となった前田氏との関係も、単純に上下貴賤の序列がつけられるものではなかったと思われるような節がある。今見られる建物は180年ほど前に建て替えられたものとのことで、そんなに大昔からあるものでこそないが、庭園は平時国がこの地に根付いた鎌倉時代の様式を守っているということだし、屋敷の内部の建築様式も豪農とか豪商の家とかとは明らかにものが違う。またしても足を運ぼうと思ったのには、先だっての九州旅行の時に読んだ「小樽殺人事件」で時国家の話が少し出てきたからというのもある。逸話として出てきたという程度のものでしかなかったが、揚羽蝶が時国家の紋であるというような話があった。それを確かめようという思いもあったのかもしれない。果たして、邸内の襖には揚羽蝶の紋があしらわれていた。なお、明治・大正期に北海道の開拓にかかわった人たちの中には、能登半島出身者も少なくなかったようである。どうも、北前船の交易を介して北海道との心的な距離感が近かったためらしい。

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 その後、狼煙を目指す。この部分に関してのみ言えば、輪島側から半島先端部を目指すように移動して、多少なりとも発見があった。外浦側は、日本海の荒波に現れた男性的な景観が連続する地域なのだけれど、それは見る方向を変えるだけでもだいぶん印象を変えるものらしい。やがて狼煙に到着。一応道の駅もあるが、立ち寄らず通過。とにかく、最果てまで足を運ぶことそれ自体に意味があった。

 狼煙通過後、珠洲市街を通って、半島の内陸部に進路を取る。もはやどこを進んでいるのかも定かではないが、案内標識によれば、やがて穴水に行きつく道らしい。問題はその先だ。ゴールデンウィーク中の七尾市では青柏祭という大きな祭りがあり、かなりの人出があるのだという。これから向かう能登半島の富山湾側には、とにもかくにも七尾市内を通らなければならないが、うまいことこれを抜けられるか。心配はあったが、予想ほどにはひどいことにならず、何とか七尾の中心部をやり過ごすことができた。街中を外して山中に進路を取り、トンネルを抜けると富山湾の向こうに立山連峰がそびえていた。道の駅いおりで休憩。なかなか感動的な光景である。この先、地図上眺めたことは幾度となくあるが、実際足を踏み入れたことのないエリアである。次に目指すのは砺波の増山城だが、そこに至るまでの氷見市をやり過ごすのにどれほど手間取ることになるのだろう。

 結局、増山城近くの和田ダムにたどり着いたとき、時計は14時を回っていた。道の駅での休憩からは、都合1時間強が経過していたことになる。

画像 ところで増山城は、これまた続日本100名城に選定されたお城である。ただし玄蕃尾城と違うのは、個人的に全くノーマークのお城だったということだ。一方、ここも国指定史跡なので、その点はうかつだったというよりほかにない。玄蕃尾城のように山深くはなく、ふもとにあるダム湖岸に駐車場も完備されていて、比較的とっつきやすい城ではあるのかもしれない。しかし、いっぱしの山城でもある。山麓から主郭までは、20分ほどかけて山道を登らなければならない。

画像 大手道らしい坂道を上っていると、横手の尾根を明らかに堀切で断ち切っているように見える箇所があるのに、それについて何ら解説が加えられていなかったものだから、発掘整備があまり進んでいないのかと思っていたら、そんなことはなかった。むしろ、空堀、石垣跡、土塁その他の遺構がかなり大規模なものであり、わずかばかりの土木工事の痕跡をいちいち拾い上げていたらきりがない状態なのだった。大事なことなので二回言う。無印百名城のとき、割とどうでも良い城を入選させていた例が散見されたが、一方でこの城をオミットしていたとは。

画像 増山城は、越中守護代神保氏の城であった。一般に神保氏の居城としては富山城が良く知られる。しかし神保氏は、越中の覇権を握るために上杉氏に誼を通じた椎名氏への圧迫を加え続けたことからかえって上杉謙信の介入を招き、富山城を追われて増山城に追い詰められたのだった。一時的には上杉氏との和睦が成立していたこともあったようだが、いつしか越中は上杉氏と織田氏の勢力が接するところとなっており、その頃には神保氏の名が史料上に見られることもなくなってしまった。曲がりなりにも大名格であった家が、その顛末すら定かでないまま消えていった例は珍しい。ただ、増山城が上杉氏の軍門に下ったことは間違いがなさそうで、謙信をして「増山之事、元来嶮難之地、人衆以相当、如何ニも手堅相抱候間」と言わしめているのだそうである。が、そんな増山城もついには織田氏によって陥れられ、その後は佐々氏、前田氏と越中を治めた大名の間で帰属が転々とし、元和の一国一城令の頃に廃城となったと推定されている。そしてそんな城中には、伝神保夫人入水井戸と呼ばれるものが残されているが、この大きな山城の中でアクセスに使ったダム側からは遠い場所に位置しているので、そこまでは見ていない。

 増山城見学にはそれなりの時間をさけたが、それでもまだ時間に余裕があったので、今日のゴール地点を目指す途上にあったイタイイタイ病資料館を見学しつつ、国道41号に入った。そこから、イタイイタイ病の発生源となった鉱山のある神岡まで南下し、国道471号に進路を取る。北アルプスの山懐、奥飛騨温泉郷を貫くこの国道沿いになお1時間ほど走って平湯温泉にたどり着いた。タイミングは18時にわずかに早いひともしごろ。懸念のあった通り、あてにしていた穂高荘倶楽部の駐車場はすでに埋まりかけていたが、一応あぶれることはなく済んだ。

つづく

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