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zoom RSS 山登ってみよう【トエンティクロスから摩耶山】

<<   作成日時 : 2017/06/25 20:46   >>

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 槍ヶ岳と言えば加藤文太郎。そして、加藤文太郎と言えば六甲山。六甲山に行くことにした。

画像 以前にも書いたことがあるとおり、六甲山とは単独の山のことを言うのではない。おおむね神戸市の北部に位置する一群の山塊を六甲山と呼び、これは数十qの連なりとなる。大都市近郊に位置することもあり、神戸市民が慣れ親しむ山として、その山中には縦横無尽のハイキングコースがめぐらされている。そのため、ヤマケイのアルペンガイドNEXTには、六甲山単独の巻もあるほどだ。他が軒並みコンセプトを同じくする複数山のチョイスとなっている中でこれは異例のことと言って良い。そして、過去にはこの本を頼りに六甲山の最高峰に登ったこともある。しかし、それとは別に気になる山もある、摩耶山がそれだ。六甲山系の名のあるピークの中でも、特に存在感のある一峰だといっても過言ではない。今回はここを目指す。コースもいろいろ考えられるけれど、今回はその奇抜なネーミングセンスが印象的なトエンティクロスから摩耶の頂に登る。

 ちなみに旧海軍では重巡洋艦に山の名をつける慣例があったようで、摩耶は高雄型の4番艦の名でもある。映画「火垂るの墓」にも出てきた。三宮駅で死んだ清太さんの父親が乗っていたのが摩耶だったようである。神戸界隈が舞台だから摩耶が選ばれたのだろうか。とにかく摩耶と言うとこの軍艦のイメージも強い。

画像 話が脱線した。スタート地点は新幹線の新神戸駅。新幹線を使うほどの大事にはしたくなかったので、在来線を乗り継いで10時直前に神戸入りを果たした。9:50にスタート。いつか滝山城攻めの時に足がかりとしたのもこの場所なのだが、滝山城に通じる道が駅裏手からすぐ左方向に分岐していくのを横目にしつつ、今日はまず山奥を目指すことになる。立地を考えれば当然のことだろうが、高齢層を中心にハイカーの姿は多い。そして、足下は登山道と言うには整いすぎた、コンクリート舗装の道。軽登山靴ですらない、スニーカーを履いただけの老人も目立つ。毎日登山と言うやつなのだろう。この道のとりつき付近には布引の滝という名所もあるし、気楽に自然と触れ合おうという層の訪問を受けることが多いのかもしれない。私は、滝を一瞥し、道中の展望地でもちょっと足を止めるだけで先を目指す。コースタイムにして4時間に満たない程度の道のりでも、一度摩耶山の背後に回り込んでから頂上を目指す形になるので迂遠なコースでもある。それに700m強程度の高さしかない摩耶山ではあるけれど、基本的には登り詰めで4時間弱と言うことになる。何となく気が急く。

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 10:16、布引調整池に到着。神戸市街の外れから歩いて30分ほど、六甲山自体もさほど厚みのある山地ではないのだけれど、その山懐にある割に満々と水をたたえている。最近聞かなくなったが、その昔「六甲のおいしい水」と言うミネラルウォーターが全国的に販売されていた。また、酒造で知られる灘もエリア的には近接しており、六甲山麓地域が水の豊富な土地であることがわかる。今日行くことになるトエンティクロスの名は渡渉を繰り返すことに由来するらしい。漢字で書くと二十渉。実際に渡渉する回数は二十回に遠く及ばないそうだが、渓流に絡みながら行く。なぜ英語名がつけられているのかは定かではない。北野異人館に住んでいた外国人が「ウエストンが日本アルプス行ったらしいぞ」「じゃあ俺らも今度の日曜天気が良かったら六甲山行かない?」みたいに六甲山に親しんだ結果、「20回川を渡るからトエンティクロスな」と言う感じで発生した地名なのかもしれない。と言う設定にしておく。
 
画像 700m程度の標高の摩耶山に対し、布引調整池の標高は250mほどになる。新神戸駅自体に向かって傾斜する神戸の街の高台に位置しているが、そこから短い時間のうちに一気に高度を上げてここまで来た。調整池から先、ちょっとだけの登りをこなした後は、いたって平たんな道が続く。山登りと言う感じではない。山歩き。ハイキング。そう表現する方がふさわしいのだろう。車の入れる道は結構あちこちに張り巡らされているし、廃屋であるにせよ、かつて人の生活の場となったであろう建物もしばしば目につく。ただそんな中で、六甲全山縦走路と出会ったりするのが六甲山の油断ならないところではある。ちゃんとした装備や、登山計画書の提出を促すパトロールニュースなるものが、廃屋化した建物に掲示されている。登山計画書を提出できるような場所などなかったような気がするけどなあと思いながら詳しく見ていると、県警本部地域企画課あてに提出となっている。

画像 起点はいまいちはっきりとしないが、10:47、地蔵谷への道を右手に見ながら直進してトエンティクロスに進入。気が付くと、足下はフツーの山道と言う感じの地道になっていた。もっとも、その整備水準はやはり神戸市民憩いの山の名に恥じない高さである。非常に歩きやすく、かつフラットだ。そんな中、最初の渡渉。渡渉と言うと橋も何もないところを渡るイメージが強いが、小さな木橋がかけられていて、おばさん二人組が腰掛け、かまびすしくおしゃべりをしている。

 ようやく始まったトエンティクロスは、雰囲気のいい道だ。すでに書いた通り傾斜がほとんどないので歩きやすく、体力の消費も少なくて森林浴にもってこいである。ただ今日は、さすがに気温が高すぎる。直射日光を浴びないのが救いではあるけれど、その辺の日向に突っ立っているだけでもバテそうな暑さだ。そんな中を黙々と歩く。面白いことに、日本名二十渉を横文字化する場合表記揺れもあるようで、道しるべにはトゥエンティークロスだとかの表記が混在している。意外なのだが、新しいものでもトエンティクロス。一番ぐらっときたのがツエンティクロス。歴史のある道なのだなあと思う。

画像 河童橋と言う名の、小さな木橋を渡って川の中州を歩いた後、しばしで二十渉堰堤の名を付された巨大な堰堤を通過。よくはわからないのだが、トエンティクロスはこの辺りで終わりらしい。さらに少し行くと徳川道との分岐に至る。11:23。トエンティクロスは30分余りの道だった。本当に、木陰の道を散歩したいときにちょうど良い感じの道だった。難を言えば、六甲山の道の中ではアクセスしづらい部類に入る点を指摘しなければならないのだろうけれど。

 徳川道はおそらく、幕府が絡んで造成された道だったのだろうと、そんな気はした。後になって調べてみると、幕末の頃に山陽道をバイパスする目的で作られた道だとしているサイトを見つけた。普通であれば海沿いの山陽道を歩き続けた方が楽だし、時間短縮効果も期待できないような代物なのだが、要するに開港後の神戸に居留する外国人と大名行列が、またぞろ生麦事件のようなトラブルを起こさないように、う回路として作られたのだそうだ。ただ、完成時期がまずく、まともに使われることがなかったのだそうだ。「徳川」の名が残ったのはどうやら、江戸幕府最後のあだ花に終わったことに起因しているのだと思われる。

画像 一部で幻の道などと言われる徳川道。摩耶山の山腹を通っているので、こちらを辿れば今日の目的地につけるし、興味は惹かれるのだけれど、今回はガイド本がシェール道をたどるコースを紹介しているので、後者に乗っかる。シェール道。何の妄想エピソードも喚起されない名前だ。たぶん、北野異人館がらみなのだろう。そういうことにする。

 このシェール道も、なかなか感じの良い道である。ただいかんせん、水のないトエンティクロスと言えばそんな雰囲気でもある。それに日差しが差し込むようになってきたのもあって、緩い登り坂の割には息が上がる。まあ、今日の山行は究極的には槍ヶ岳に向けた鍛練の意味があるので、体に負荷がかからなければあまり意味がない。それにしても暑さによる負担増は、トレーニングの観点からどういう効果が期待されるのだろうか。よくわからない。勇気、力、真実をぶつけ最後のだらだらっとした坂を上りきると穂高湖の傍らに出た。湖は見ていかない。最前の河童橋もそうだが、六甲山には上高地界隈に対する羨望があるのだろうか。

画像 12:25、奥摩耶ドライブウェイに差し掛かる。少し付き合った後、最後の登り・アゴニー坂に着手する。agonyは激しい苦痛の意味だ。表現としてはかなりきつく、おどろおどろしい。坂の入り口には楽しげにハイキングする家族のイラストをあしらった看板が立てられているが、北野異人館の外国人を苦しめた(と思われる)この坂は、今日のコースの中では一番の激登りである。ただ、そんなに距離が長くない。12:40、天上寺の傍らを通過、続けてオテル・ド・摩耶の前を通り過ぎて、掬星台に到着。厳密には摩耶山の山頂ではないのだけれど、象徴的な意味で今日のゴールとしたい。ちなみに掬星台で「きくせいだい」と読むのだそうだ。言われてみればなるほどとが思うが、あまりなじみのない響きではある。名前の由来はそのまま、1000万ドルの夜景とも言われる神戸の夜景を星空に見立て、それを掬えるようなロケーションであることによるのだろう。梅雨の日中なので展望は全般に眠たげに見えるが、それでも神戸の街並みを一望のもとにできる。12:50の到着となった。

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画像 それにしても、神戸市側はかなり切り立った斜面となっており、もし登下降しようとなるとagonyどころの騒ぎではなさそうだ。が、幸いなことにこの先にはロープウェイとケーブルカーが通っているので、それを使えば何とかなる。何とかなるが、まったく、摩耶山は知力・体力に加えて資力も要求してくるなかなかタフな山である。それでなくてもこの種の乗り物が好きな私は、片道880円也を支払って山を下った。この駅の名前が星だの虹だのととてもファンタジーなのがいかにも摩耶山らしい。けれどケーブルカーを降りた先は、いたって普通の住宅地となっていた。路線バスも通っているには通っているが、あまり便利が良くないようなので、仕方なしに王子公園駅まで歩いた。どうやら六甲山上は、多少なりとも涼しかったと見え、神戸の市街地はすでに真夏を思わせる気候が到来していた。

画像 ところで、あまりその自覚もなかったのだが、槍ヶ岳の前哨戦である仮想槍・蝶ヶ岳への3週間後に迫っている。間に三ツ瀬明神を挟むものとして、1週アイドルタイムができてしまう。もちろん梅雨時なので、そもそも山がどうこうと言う天気にならない可能性もあるのだけれど、槍への対応能力を高める意味で、一度はアクセス難から見送ることにした伊勢山上への挑戦をもう一度考えてみようかと言う気になってきている。


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