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zoom RSS 山登ってみよう【蝶ヶ岳】

<<   作成日時 : 2017/07/19 20:57   >>

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画像 午前5時半少し前、バスは上高地バスターミナルに到着した。今日歩くコースは、徳澤から長塀山尾根を詰めて蝶ヶ岳の山頂を踏んだ後、横尾に下るというもの。バスターミナルや河童橋のあるあたりと徳澤の間は徒歩で2時間、横尾となると徒歩で3時間ほどの道のりとなる。全体で10時間ほどが今回の歩行時間となるのだけれど、うち半分は山道と言うよりは原生林の中の道を歩くことになる。累積標高は多分1000mほど、歩行距離は20q強と言ったところになるだろうか。普段の東海自然歩道歩行とさほど変わらないとも言えるが、それにしてもいまだかつて10時間の大台に乗るコースを歩いたことはない。

画像 上高地のうち、一般の観光客が歩くのは大体明神のあたりまでである。私もここまでは歩いたことがあり、穂高神社の奥社やカモンジ小屋がある。その先はまったくの未体験領域だが、実際に歩き出してみると、やはり山道と言う感じではない。明神までの区間に比べればいくらかアップダウンもあるし、路面の状態もいくらかは悪くなるが、観光地水準ではなくなるといった程度の差だろうか。時間が足りなくなる懸念があるので、そんなところをかなりのハイペースで進む。道中、野猿の群れに取り囲まれかかるが、上高地のサルは人に慣れている。変に目を合わせたりちょっかいを出したりしなければ、むやみに人に襲い掛かってきたりはしなさそうだ。それにサルくらいは、河童橋や大正池の方にもいる。上高地の入り口付近に比べれば自然が豊かなのか、そうでもないのか。ただ明神から先に着けられた道は、わかりやすい自然美に触れられるところを通っているというよりは、さらに奥地に向かうための実用本位の道と言う感じがして、あまり歩いていて楽しい感じではない。

画像 中部地方の梅雨はまだ明けていないが、今日の天気は比較的恵まれている。ただ、事前にMountain Weather Forecastで情報を収集していたところ、午前中は晴天が続くが、午後ともなるとTSと言う謎の表記がなされている。TSって何だろうと思って調べてみると、Thunder Stormの意味らしい。なんかFFでそんな技を使う召喚獣がいたが、道理で稲妻の画像が張り付けられているわけだ。要するに、長期戦は良くない。かなうものなら13時を迎えるより早く山道を後にしたいし、少なくとも樹林帯には入っていられるようにしたい。そんな思惑もあって先を急いだところ、午前7時直前に、徳澤にある長塀山・蝶ヶ岳への登山口にたどり着いた。徳澤周辺は思ったより観光地的な風情を漂わせているけれど、時間が微妙である。登山者はすでに行動を開始し、観光客はまだ宿やテントに逗留しているためか人の気配が少ない。さっさと登りに取り掛かる。

画像 蝶ヶ岳については、穂高の展望台としての名望とは裏腹に、登山道に関する評判が芳しくない。曰く、樹林帯に覆われて展望がないまま延々と急登が続く。まったくその通りである。息つく間もない急登がひたすら続く。梓川があっという間に遠ざかり、差し向かいに位置する明神や前穂の稜線がどんどん近づいてくることからも、登りのペースの速さがうかがわれる。もっとも、2600m台の高さしかない蝶ヶ岳に対し、穂高の主稜は3000m近い。ほぼ対等の高みに立っているように見えるのは目の錯覚にすぎないのかもしれない。長い急坂は変化が乏しい。しかも人に全くと言って良いほどで会わない。途中で一人だけトレランの人に追い抜かれただけで、ひたすら自分との闘いを強いられる感じだ。このハードな登りに、燕岳の時の三大急登とは何だったのかと言う思いが萌してくる。

画像 1時間ほど登って、高度にして500〜600mほどを稼いだと思われる頃、ようやく道しるべらしきものが姿を現す。「蝶ヶ岳まで4q 徳沢まで2q」。高度はかなり稼いだが、まだ半分歩いていないことになる。この辺りまで来ると傾斜が緩んでくるが、さすがに気持ちも倦んでくる。考えてみれば、歩き始めからの時間で言えばすでに2時間半が経過しており、なまじの山ならすでに山頂に立っている時間帯とも言える。そうはいかないのが日本アルプスなのだけれど。それに、傾斜が緩んだといっても思ったほどにはペースが乗らない。酸欠気味である。高山病の症状だろうか。想像は容易につくが、標高2300mにしてこれか。まあ、体質や体調次第で、2000mを超えれば高山病の症状は出て当然なのだ。じっくりモードに切り替えてあまり変化のない道を行く。9:29、長塀山に到着。やはり、展望も何もない道中の一ピークと言う感じでしかない。ただコースタイム3時間40分のところを2時間半ほどで来ているので、頑張れてはいるのだろう。それに樹間に蝶ヶ岳の山頂っぽいピークも覗いている。頑張ろうではないか。

画像 変化がないないと繰り返してきたこの登山道、長塀尾根だけれど、長塀山を越えたあたりで少し様子が変わってくる。道のりはいよいよ平たんになってきて、小さな池が姿を見せ始めた。妖精の池などと言う浮世離れしたネーミングセンスが印象的だが、いたって普通の大きな水たまりみたいな池である。また、高山植物の一種なのだろう、小さな草花が姿を見せるようになるのもそれまでにはなかった趣向だ。左手にはわずかながら穂高の主稜も見える。サンダーストームを避けられれば御の字だが、山頂ではできれば穂高の展望台の面目躍如と行きたい。息は荒いが、そんな中でも精いっぱいのペースを出そうと頑張ってみる。

画像 どうやら蝶ヶ岳山頂と見える最後のピークを視認したところで森林限界を超え、溶け残りの雪が姿を現し、さらに先行する登山者の姿をとらえた。一気に訪れた変化に違った意味でめまいを覚えそうになった。10:12、山頂到着。北アルプスとは思えない広くなだらかな山頂である。蝶ヶ岳は、その優美さを感じさせる山名とは裏腹に烈風の名所なのだそうだが、そういった感じでもなく穏やかな天候の恵まれている。もちろん、目の前には両手を広げるような槍穂高連峰の立ち姿がある。ちなみに、蝶ヶ岳の山名は雪形にちなむという。

画像 その辺の石ころに腰かけ、槍穂高のほうを眺める。西穂高や焼岳の方角から眺めた時とは違い、蝶ヶ岳から見る穂高はまるで山壁のようだ。岩の要塞のようだった縦走路側方向からの眺めのほうが押し出しが強くて好きだと、個人的には思う。山と高原地図と引き比べながら、あれが北穂、あれが奥穂、あれが大キレットなどとやってみるが、なんだかピンとこない。それよりは槍だろう。遮るものなく穂高が見えるということは、そこに連なる槍ヶ岳も手に取るように見渡すことができる。光学ズーム20べえだぁぁ!!とやると、できればそこに泊まりたい槍ヶ岳山荘の様子なんかも見える。

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画像 が、ちょっとたじろぐのが登山道があるはずの槍沢の様子だ。梅雨明けが近いであろうこの時期だというのに、雪が多い。決行を予定する時期は8月の頭。その時期にも残雪があるようなコースなのか?もしかして軽アイゼンの携行が必要?今日は訓練の意味も込みで日帰り登山のくせに荷物を小屋泊まり一泊並みにして分量多め、重量重めにしているけれど、ここに持ち重りのする軽アイゼンを上乗せするのはなかなかうんざりする。もっとも、この懸念は山を下って松本駅の書店を冷やかしていた時に氷解した。北アルプスの登山道を立体的に描いた地図が掲示されていた(こういうのがあるのが松本だなあと思う)のだけれど、それによれば道は雪が最後まで残るだろう沢筋を高巻きにしていた。とはいえ、かなり急峻な斜面を行くことになるだろうということは想像に難くない。しかし、コースの概念をこうして俯瞰する機会を得られ、今日この蝶ヶ岳に登った意義はあったのだろうと確かな満足を得た。

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画像 しばらく山頂に滞在した後、下りの道筋を考え始める。当初の予定は横尾に下るというもの。遠回りになることは否めないので、来た道を引き返したいという思いにもかられ始めていたが、初志貫徹することにした。蝶ヶ岳ヒュッテの傍らをやり過ごし、常念岳方向に進む。そのまま行くと蝶槍と言う錐型の小ピークがあり、ここに寄って行こうかとも考えたが、遠望するにあえて寄り道していくほどのものには思えなかったのでこちらはパス。道中、皇居のお堀のカルガモを思い出させるような野鳥の家族に遭遇した。カモかな。いや違うな。カモはもっとバーって動くもんな。またしてもウズラの親子に違いない。

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 眺めの良い主稜上の道から分かれて、横尾に下る道に入る。こちらも長塀尾根と似たり寄ったりの急坂だ。と言うか、こちらは梓川から稜線まで一気に突き上げる感じの道になっているので、往路とは違った意味での辛さがあると思う。共通しているのは、稜線から少し下るとすぐに樹林帯に入るということ。ここをまた延々下る。膝が笑い出しそうになる坂は1時間半以上続いた。途中変わったところと言えば、槍見台と書かれた質素なベンチと、なんちゃって槍見台の通称がありながらオリジナルよりは槍への展望に優れる一群のベンチ程度しかないが、いずれにせよかなり下った後に位置しているため、単に展望に期待するだけなら山頂には遠く及ばない。

 12:37、横尾に到着。ここも、山小屋とも山のホテルともつかない宿泊施設があり、驚いたことに自販機もある。価格設定は山料金だと思われるが、この自販機は活用できるかもしれない。総じて休憩するに都合の良さそうな場所ではあるけれど、山を下ったばかりだし、ここは様子を一瞥だけして先行する。ちなみにここ横尾が、有名な涸沢との分岐点になっている。軽井沢と涸沢を勘違いするアベックが登場する新田次郎の怪作の舞台となったことで有名な涸沢。ちなみに涸沢までは6q、槍ヶ岳まで11qとなっている。明確に表示はされていないが、バスターミナルまでは10qくらいだろうか。槍を目指す場合、ここからだんだん登りが本格化していくことになるのだろうが、距離だけでいえばおよそ中間地点と見ることもできる。所要時間は、もちろんその限りではない。

画像 急坂の下りによって膝にはダメージが蓄積していたらしく、足ががくがくする。普段なら何ともないような砕石敷の道が梓川の下流部に向かって続くが、このちょっとした石の凹凸にすら足を取られそうになる。この状態では、バスターミナルまでの道があまりにも遠い。まずは徳澤、次に明神と、少しずつでも着実に進んでいくしかない。徳澤横尾間は地味にアップダウンがあり、疲弊した状態だと何気に辛い。しかもこの暑さ。とても冷涼な気候で知られる上高地とは思えず、体にこたえる。1時間をかけて徳澤まで歩いた。徳澤にもロッジがあり、「氷壁の宿」の看板を掲げている。さらに自販機や売店は言うに及ばず、レストランまであるが、自販機で200円のジュースを買い、英気を養う。今朝はバスターミナルからここまで1時間半で来たが、今の状況だとなかなか厳しいだろうな。その予想はたがわず、13:41に徳澤を後にし、14:20に明神壮前に到着。ここでまた自販機の紅茶を買い一服。さらに40分をかけて河童橋、バスターミナルまで引き上げた。概括して、横尾まではほぼ平坦とは言いながら、観光客のいなくなる明神徳澤間は意外と起伏がある。徳澤横尾間はもっとだ。

 槍への挑戦は、今日歩いた距離にもう500mほどの登高を上積みする感じになるのだと思う。高山病の症状がさらに厳しいことになりそうだが、今の私の体力で通用しない世界と言うわけではなさそうだ。気になることがあるとすれば、蝶ヶ岳まで上高地から日帰りと、槍ヶ岳1泊2日とどちらが体力的に厳しいのかと言う点。まあ、どっちもどっちなのだろうなと思う。

 帰路もまた、高山周りにするか松本周りにするか選択できたが、松本に回って帰ることにした。今日の歩行の終盤では、始終松本駅の駅そばが食べたかった。

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 これまで準備を続けてきた槍ヶ岳登山だが、いよいよ最終段階に入る。下見である。訓練もさることながら、ある意味これが一番大事なのかもしれない。現地までの足、前泊の準備、コースの概略についてガイド本その他では得られない情報をつかみに行く。もちろん、どうせならそれ自体も山行であった方が良いので、今回は槍ヶ岳までの道のりを途中で外れ、蝶ヶ岳に登ることにする。一般には穂高の展望台として名高い。標高は2677m。日帰りできる山であるとされてはいるが、そういう場合、一般には安曇野側から登られることが多い... ...続きを見る
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