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zoom RSS 山登ってみよう【槍ヶ岳・中編】

<<   作成日時 : 2017/08/09 21:43   >>

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 そして雪渓が終わり、また夏道。心なしか傾斜が増しているような気がする。もしくは空気が薄くなってきたせいか、だいぶ長丁場になってきたせいか、歩いていて息が上がる。とにかく、だんだん苦境に追い込まれてきたことだけは間違いない。11:05、天狗沢分岐に到着。登りの険しさもさることながら、残りの水分が心もとなくなってきているのも辛い。たぶん、あの梅のせいで水分をがぶ飲みしたのが祟っている。一応、地図を見ると同中には水場があることになっていて、確かに「水沢」とペンキマークの施された岩場の湧水が50分ほど進んだところにありはしたのだけれど、これをそのまま飲んでよいのだろうか。「水沢」と言う名の飲用に適さない水の湧き出す沢ではあるまいな。もうちょっとほかに説明のしようがなかったのだろうか。今日び水沢と言われても水沢アリーしか思い当たらない。しかし、背に腹は代えられないので空のペットボトルに水沢の水を詰めた。

画像 何やら危うげな傾斜地の雪渓を横切り、行くこと少しの12:09、ついに槍の穂先がその姿を現した。上高地付近をうろうろしていたころ、天気は悲観すべき状況かと思われたが、若干の雲はあれど青空を背景にそそり立つその姿が感動的だ。そして槍の穂先とともに、いくつかの小屋も見える。手前にあるのが殺生ヒュッテ。そしてまだ少し距離のある稜線上のそれが今日のゴール地点槍ヶ岳山荘だ。ここまでは順調に来たと言って良い。しかし、ここからが苦しかった。近くの岩場には1500だの、1400だのと白ペンキで数字が書かれている、何を意味するのかが定かではないが、おそらく山頂もしくは槍ヶ岳山荘付近までの距離を表すものだと思われる。この数字が、一応順調に減ってはいくのだけれど、あまりそのペースが速くないのも事実。待望していた槍の姿を視認してからこっち、周囲の状況にあまり変化がないのも辛い。

画像 12:40に、かの播隆上人がこもったという播隆窟、俗な言い方では坊主岩小屋などという名もあるようだが、ここを通り過ぎてからは進んでいるのか進んでいないのかさえ判然としないような心理状態となってきた。一応、槍ヶ岳山荘にまで届かないうちに日が暮れることはなさそうなので、じっくり登ろうではないか。頭の中ではそんなことを考えるが、殺生ヒュッテが今日のゴールだったらどれほど楽だっただろうかなどと言うことも考える。それほど、殺生ヒュッテへの道を分けてから始まる最後の登りが長かった。急な斜面をジグザグに折り返して登るので、そこまでハードな坂だといううわけでもないのだが、全くスピードが出ない。一方、山の下の方からはだんだんと雲が湧きたってきていて、一度などは小さな雨滴がぱらつく状態になりかけたのだが、それでもペースを上げることができなかった。結局、コースタイムより遅めにこの坂を上り、槍ヶ岳山荘前に着いたのは14:17のこと。奇しくもと言おうか、上高地バスターミナルからちょうど9時間の道のりとなった。

画像 一人客は予約不要だというので、予約をしないままここにきている。一応泊りの手続きを済ませたいところではあったが、その前にまず人心地就きたかった。小屋の前のベンチのめぼしいところにはすでに先客がいたが、空いているところを見つけ、とにかく腰掛けた。コーヒーでも飲みたい気分だが、どこでどう頼めばよいのかシステムを把握するのもおっくうに思えたので、小屋に入ってすぐのところにあった自販機で、山小屋プライスのジュースを買ってそれで一服。ここにもテレビクルーがいる。ロケハンだろうか。

画像 予想に反して、良い天気になった。穂高方面は雲に包まれていて展望が利かない状態ではあるけれど、少なくとも穂先の周りはわずかのガスさえもなく、その全容がはっきりとうかがえる。夏山ではやや遅い時間帯とは言え、穂先に登っている人たちも少なくなく、一応は彼らの身にも差し迫った危険はなさそうに思える。これだけ天候に恵まれていると、このチャンスに登っておいた方が良いのではないかと言う気持ちにならないでもなかったが、さすがに今日は草臥れた。このコンディションでこの鋭い峰に登るのは冒険である。明日の朝、当初から予定しているタイミングでアタックを仕掛ける際、天候に恵まれることを祈るばかりだ。

画像 一休みの後、いよいよ宿泊手続き。槍ヶ岳山荘は、北アルプスでは白馬山荘に次ぐ規模を誇る大規模な小屋なのだという。そこに週の中日にやってきたのだから、もしかしたら一つの部屋を一人で使うとは言わないまでも数人でシェアするような状態になるのではないかと少し期待していたのだが、さすがにそんなことにはならなかった。もっとも、1枚の布団に数人で寝るということもなく、一応は5枚の布団に4人で寝る状態が保証されているらしい。まあそれだけでも良しとするところなのだろうと思って布団に横になっていると、夜が遅く朝が早かったこともあって、いつの間にか寝入ってしまっていた。

画像 目が覚めてから少しで夕食の時間となった。設備はこれまでで一番大きな槍ケ岳山荘だったけれど、食事の内容は一番質素だった。ハンバーグと小さな魚のフライがメインにつけられていて、粗末と言うほどではないのだけれど、ワインも出た南アルプスの広河原山荘に比べると合宿飯みたいだし、宿泊客の多さもあってか、飯とみそ汁の盛り付けはセルフサービス、しかもお代わりのない?システムとなっているのかもしれない。考えてみれば、曲がりなりにも車で資材の搬入ができた広河原や、ヘリを使うにしても山麓からの距離が短い冷池山荘などに比べれば、厳しい条件にある山荘なのかもしれない。ちなみにこの食堂の一画に、播隆上人の像が安置されている。山に来てまで食べ物についてぜいたくを言うべきではないなと自分を戒めつつ、もう一度表に出た後は部屋に戻り、今度こそはさっさと眠ることにした。

つづく


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山登ってみよう【槍ヶ岳・前編】
 深田久弥は、著書「日本百名山」の中で、富士山を日本人憧れの山とするとともに、槍ヶ岳は日本に生まれて山に魅せられた人間が憧れる山だという意味のことを書いている。異論もあろうが、けだし真理なのだろう。かくいう私も、興味自体はずいぶん早くから持っていた。何といっても姿形があまりにも特徴的なので、いやでも目を引く。その一方で、峻険そのものの山容は素人がうかつに登って良いような山とは思われなかったので、憧れは憧れのままで終わる可能性があった。ところがしかし、アルプス方面の山を登っていると、次第に槍... ...続きを見る
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