ストリート嫗

 おそらく女性にはまったく関係のない話だと思われる。名古屋駅西、ビックカメラから少し裏手に入ると、いつも暇そうに突っ立っているおばさんが二人ばかりいる。昼だろうと夜だろうと関係ない。あまり顔をまじまじと見たことはないのだけれど、確実に五十路は超えている。このおばさん方、男が目の前を通ると、十中八九は声をかけてくる。私が通っても声をかけてくる。まともに取り合った事はなく、いつも無視して通り過ぎる。大体の男がそうする。

 彼女らを知る者の間では、彼女らの正体は街娼だと言うことで大方コンセンサスが形成されている。私もそう思う。そして興味が行き着く先はいつも、「果たして客を取っているのは彼女ら自身なのか否か」という点だ。世の中にはいろいろな嗜好の人がいるので、かなり念の入ったフケ専もいるのだろうが、果たしてうまくそういう客をつかんで生計を立てられるのかとなると、甚だ疑問だ。となると、どこかに「実働部隊」がいて、彼女らは仲介人に過ぎないと言うことになるのだが、そう考えると途端に犯罪めいたにおいがしてくる。いや、春を売るのが若い女だろうが老女だろうが違法は違法なのだけれど、何と言うかリアリティのようなものに雲泥の差がある。

 そもそもおばさん達は、名古屋駅裏のちょっとした名物になっている感すらあるのだけれど、警察からも、おそらく存在するであろうあの辺りをシマにしているであろうその筋の人からもお目こぼしされていそうである。いつ行っても彼女らが路上に立っていられるのが何よりの証拠だ。おそらく、彼女らの稼業がおよそ商売として成り立つレベルではないからこそかかる現状があるのであって、なぜ商売として成り立たないかと言えばすなはち、客を取るのがほかならぬ彼女ら自身だからと推理しているのだけれど、真相は確かめようもない。本人たちに話を聞けば一発で分かるような気がするのだけれど、いろいろな意味で怖くて、とてもそんなことはできない。

 そんなことを書いていて、ふと、昔横浜に「ハマのメリーさん」と呼ばれる伝説的な娼婦がいたことを思い出した。メリーさんに比べれば、彼女らが伝説化する可能性は低そうだ。彼女らの姿からその背後に潜む物語を見出しにくいと言うか、自分なりの物語を投影しにくいと言うか。都市伝説も含め、およそ伝説などというものは、一見客観的に見える事実を、自分の好きに切り取って形成されるものなのだろう。

この記事へのコメント

haru
2009年05月08日 16:23
気になりますよね、彼女たち。
自分の記憶では15年前から
同じ女性が立っており、声かけしています。
彼女たちの誘いについていった
猛者は身近にいないのが残念です。
結構みんな興味深々だと思うんですけどね。

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