目新しい都市伝説本とは?

 以前からちょいちょい都市伝説物の本を書いていた宇佐和通氏の都市伝説本が、最近になってまた刊行されたらしい。もともと可もなく不可も無くの線を行っていた著者だが、最近の軽薄な都市伝説ブームの中にあっては、同氏の過去の著作の水準でも頭一つ分ほどは抜け出しそうなので、どこかで実物に出会ったら買ってみようかと思っている。出色の書ではなくとも、数あるうちの一つとして、ひとまず押さえておいても損はあるまい。逆に言えば最近のネット情報再録本は買う価値も無いということなのだけれど。

 ところで、同書について調べていた時に嫌でも目に付いてきたのがネット書評の類なのだけれど、面白いことになっている。よく目に付いたのが「噂の信憑性評価の手法・ロジックはありきたり」「同系統のディティールが異なる話を列挙していく編集方は新鮮」という二点なのだが、古参のマニアならお分かりの通り、最近のブーム以前からあった都市伝説研究本のつくりとはそういうものである。都市伝説をやって来た研究者にとっては、極端な話、それが嘘か本当かという部分は重視するに値する部分ではない。重要なのはむしろ、なぜそういう話が存在するのかについての考察だった。どちらかと言えば古典的なつくりをしているであろう宇佐氏の本のそういった所が、新しいとして評価されているらしい。

 似たような経験は以前にもある。うちのサイトがとある雑誌に紹介された時の寸評に、「同じ系等の話を並べて紹介する切り口が新鮮」という一文があり、面食らった。新鮮も何も、あれは既存の都市伝説本の作法をそのままパクって作ったサイトである。都市伝説という言葉が一般化というか通俗化し、出版物の数も増えて以降しか知らない人にはそのように見えるのだなと、目から鱗が落ちた気分になったものだ。

 さらに言えば、「真相解明のロジックは既知のもの」とするアマチュア評論家諸氏は、あくまで「ネットでよく言われているので新味が無い」と評しているだけであって、そのロジックが時代遅れになりつつあるというとらえていないようだ。ネット情報は決定版ではなくあくまで過渡期の情報なのだ。物好きなマニアたちは、ネットに氾濫した情報とそれを元に粗製乱造された出版物の次元よりも、さらに議論と推論を推し進めているのだが、そういった動向はまだ大して浸透していないらしい。

 この調子だと、この数年で都市伝説の裾野が広がったとは言っても、その研究が大して深まっていないのではないかと寂しくなりもする。それどころか、数年を経て、ぐるり遠回りをして、スタートと大して変わらないところに戻っているのだとしたらそれももどかしいのだが、研究とかそういったものは、チータよろしく三歩進んで二歩下がる具合に、少しずつ前を目指すしかないのかもしれない。

この記事へのコメント

ずおずお
2009年06月28日 06:57
mariciさん、はじめまして
ずおずおと申します。私も妖怪や昔話が好きで、ホムペの方からこちらへ飛んできました。
やってきて早々、ぶしつけなお願いで恐縮なのですが、
貴殿がホームページの方で書かれている、「しっぺい太郎」の記事について、うちのブログで紹介させていただけないでしょうか?
私は犬も好きで、柴犬のブログをやっておりますが、以前から好きなしっぺい太郎について記事を書こうと思いたち、以前拝見した貴殿のページを思い出したので。
「しっぺい太郎三世」の写真がとてもかわいくて。
今回記事と関係ない長文、ご容赦ねがいます。
よろしくお願いします。
ずおずお
2009年06月28日 06:59
すみません。
先のコメントに追加です。
当方ブログURLおしらせします。
http://zuozuo.fruitblog.net/

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