トイレ伝説・パチンコ店の場合

 大阪でパチンコ屋が放火され、客や従業員が巻き添えになって死亡した。で、漫然とそれに関する掲示板の書き込みやらブログやらを読んでいたら、ちょっと気になるうわさを見かけた。「表沙汰にされていないが、パチンコ屋のトイレで自殺する人は非常に多い」のだそうだ。パチンコ叩きの流れの中で出てきた話である。

 私はパチンコが嫌いだ。以前にも書いた通り、ギャンブルそのものは否定しないのだが、実態がギャンブルであることを糊塗しようとするパチンコ業界の姿勢が気に食わないのである。従って、今回のネタを取り上げるべきかどうかについて、多少の逡巡はあった。当然パチンコ業界のイメージアップにつながるような話ではないし、ちょっと調べてみたら案の定ネガティブキャンペーンのため頻繁に持ち出されるうわさだったので、下手に取り上げれば感情的な中傷になりそうな気がしたからだ。嫌いであるがゆえに、理性的で客観的な批判をしたいと言う気持ちもまた存在するのである。が、なにやら胡散臭いこの話、残念ながらネタ日照りのブログにとっては近年まれに見る好餌だった。

 話を本筋に戻すと、負けが込んだ結果、パチンコ屋のトイレで首を吊って死ぬ中毒者は多いのだと言う。データによる裏づけとか、信用に足る報道など、まともなソースは無い。

 首吊り自殺をするにしても、ロープとかの資材を調達したり、あるいは本格的な道具に頼らず手近な持ち物で遂行するための知識を得たり、それなりの準備をする必要はあるだろうし、そう考えるとパチンコ屋のトイレでの自殺は、いわゆる発作的な自殺とするには少々不自然な気もするのだけれど、その点に関しては、多くの場合追求されない。逆に、パチンコで借金を重ねてついに新たな借金のあても返済の見込みも無くなったような人が、死に場所としてわざわざパチンコ屋のトイレを選んでいるかのような書き方が目に付くことはあるが、それはそれで理解の範疇を超えている。まあ自殺者の心理とは並の人間の思考など超越してしまっているのかも知れないと、思わなくもないのだけれど。

 「パチンコ トイレ 自殺」あたりでググって見ると、上述したような内容のページはそれこそ枚挙に暇が無いほどヒットしてくるのだが、目に付くところの多くは「2ちゃんねる」ベースの情報である。板にもよるが、「2ちゃんねる」におけるパチンコへの風当たりは結構強く、書き込みも否定的な論調が多い。まれに一次体験を語っているらしき書き込みも見られるのだが、やっぱり「2ちゃんねる」の、ガチガチのパチンコ否定スレで見られる情報だったりするだけに、ちょっと鵜呑みにはしにくい。

 また、「2ちゃんねる」由来以外の情報があっても、結局どこの誰発とも知れない伝聞情報をそのまま引き写しているだけだったり、あるいはそれを根拠に「事実です」とまで力説する式のものである。典型的な都市伝説の構造だ。

 こういうことを書いてると、「警察はパチンコ業界とズブズブだから業界の不利になる情報が表面化しないように配慮している」「マスコミは広告主として上客のパチンコ業界を悪く書かない」「現在の産業構造ではパチンコ産業の裾野が広がりすぎたため誰もその首に鈴をつけるような真似ができない」という反論につながっていくかもしれない。そういう理屈にもそれなりの説得力はあるのだが、同時にそれこそが典型的な陰謀論の論理と言うものでもある。事実がどうあれ、少なくとも、今のところパチンコトイレ伝説を裏付けるものは状況証拠だけといった状況だ。リテラシーの観点からはちょっと受け入れられるような話ではない。

 ここまでの流れだと業界の肩を持っているようだが、何せパチンコはヤクザな商売である。蛇の道は蛇とはいうものの、こんな怪しげなうわさの力を頼って世論をアジるのではなく、出来れば全うに法と照らし合わせて適正化し、一部の業者を法の下に囲い込んで公営ギャンブル化でもして、せめて競馬競輪競艇並みに出来れば良いのだけれど。

 今回は今一つまとまりを欠く内容となったが、要はいつもと同じ。嘘か本当か分からない情報が、一部の人たちからとは言え事実と認識される現象は興味深いと、そういうことである。

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