足りない池

 多分子供がやっていることだと思うのだが、時々かなり力技といえる検索を行っている人を見かける。「自分の住んでいる地名+都市伝説」というようなパターンである。例えば名古屋などの政令指定都市クラスならばそれで目ぼしい結果も得られるのかもしれないが、豊橋あたりで同様の検索をして目当ての情報を探し出すのは苦しそうだ。大体、人口五十万に満たないような集団の中でのみ共有される物語は、伝説と言えるものだろうか。むしろ世間話の位に近い。ネット検索に血道を上げるよりは、日常会話に対しアンテナの感度を上げた方がよほど効果的な気もする。

 などと言いながら、今回の話は名古屋の隣、人口三十万人強の春日井市のうわさ話。ただし、テーマ自体にはある程度の普遍性も認められる。不思議な地名の起源説(?)だ。あらかじめ断っておくと、ネットで拾ってきた話である。裏取りは出来ていないし、類話も見つかっていないので、でっち上げの怪談である可能性も否定できない。ともあれ、以下のような話である。

 現在県営住宅が建っている某所に、「四つ池」と言うのがあった。今は完全に埋め立てられているが、そもそもその場所には池が三つしかなかった。その池ではよく子供が行方不明になり、水死体で見つかったのだけれど、夜になると存在しないはずの四番目の池が姿を現し、子供の遊ぶ姿が目撃されたのだと言う。

 ソースではかなり具体的に場所が特定されていたのだけれど、一応ここではぼかしておく。しかし、ネットに現れてくるような表層的な情報を浚っただけでは、どうもその場所に「四つ池」という地名が存在していた形跡は認められない。春日井市内に同様の地名が皆無と言うわけではなさそうだが、ネットで得られる情報は、原話の指し示す場所とは全く別の場所のものである。

 例によって例の如く、掲示板でのやり取りの中で唐突に出てきた話なので仕方がないのかもしれないが、原話の話のつなぎ方はどうも自然とは言い難いし、「夜になると存在しないはずの四番目の池が姿を現し、子供の遊ぶ姿が目撃された」と言うくだりは、安手のホラードラマのように嘘くさい場面設定である。いい年の大人が噂し合えるようなものではない。いいとこ子供の噂といったところか。仮に「四つ池」が存在した場合、三つしかないのに「四つ池」という地名の起こりについては、少々剣呑な想像も脳裏をよぎった。

 フカシとまでは断じないが、やはり眉に唾して接するべき話なのだろう。今回のエントリーは、時期が時期だしちょっとした暑気払いということで。もう少し気の利いた肴が用意できればよかったのだけれど。

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