冬の夜語り

 最近はあまり流行らないが、一昔前は夏ともなると古典怪談のテレビドラマ化が結構行われていたような気がする。中でも抜きん出ていたのが「東海道四谷怪談」と「番町皿屋敷」、ことによってはここに「牡丹燈籠」辺りを加えて日本怪談のビッグ3とされるほどだが、この中でも「四谷怪談」は特に怖かった。お岩さんのビジュアルが強烈なのもあるが、演者が事前にお岩さんのところにお参りする慣習があるという話が、子供心に怖かったのである。

 「四谷怪談」に限らず、幽霊やら妖怪やらが登場する文芸作品等々を公開する時、変事があるのでお参りをすると言う話はしばしば耳にする。日本的な現象なのかと思っていたのだけれど、最近知ったところでは、どうもそうとばかりも言えないらしい。日本の場合とは勝手が違うのだけれど、シェイクスピア四大悲劇の一つとして知られる「マクベス」は、演劇関係者の間では、名前を出す事自体不吉だとされる迷信のある演目らしい。特に海の向こうのイギリスではその傾向が顕著らしく、「あれ」と言う代名詞を出すにとどめて前後の文脈から推測できるように話したり、「スコットランドの芝居」と言ったりするのだと言う。

 一体全体どういう理由でそこまで忌み嫌われているのか。要は臣下が主を殺害して国の支配権を簒奪し、疑心暗鬼に駆られて自分を脅かす存在を次々抹殺しようとする、陰鬱で血腥い話であるために不吉視されるということらしい。ちょっとネットで調べてた限りでは、劇中に登場する魔女の台詞が、本物の魔女の台詞から材を取られていたため、魔女の呪いがかかっているのだとも言う。私なんぞは「マクベスは不吉」と言う話を聞いて興味を持つまで、この有名な悲劇がどういう筋なのかさえ知らなかった。マクベスと言えば「戦闘機怪獣マクベス」しか思い当たらなかった口である。

 なお、本邦で「四谷怪談」にまつわる祟り談めいた話が聞かれる理由の考察として、個人的に最も納得できたのは、「歌舞伎の演目としての『四谷怪談』は、大仕掛けを多く用いた関係で事故が頻発したため、そこに端を発している」というものである。

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