アイアンカムイ・その5

 翌朝。つけっぱなしになっていたテレビからは、桝太一アナの声が流れていた。耳慣れたいつもの番組。始まったのは、アイドルグループがオリンピック競技に挑戦する趣向のコーナー。飛び起きる。このコーナーが始まるということは、7時が目前であることを意味する。寝過ごした。今日乗る予定の列車は、東室蘭駅7:18発の特急。慌てて身支度を済ませ、駅に向かって走る。こういう時、苫小牧や釧路の時のように駅に近いホテルだったら。こういう時、JR北海道がらしさを発揮して道中でエゾシカをはねたりして列車運行に遅れが出てくれたりしたら。そんなことを考えながら走った結果、別に特急の遅れを期待するまでもなく、列車の到着に間に合ったが、危ういところだった。

kamuy25.jpg 特急スーパー北斗は、最終決戦の地、函館に向かって走る。実は昨日になって初めて気が付いたのだけれど、函館本線のうち砂原支線と呼ばれる部分の取りこぼしがあった。まずは道中、いかめしで有名な森駅を過ぎたあたりでルートビューンを使い、回収。ここも一度も足を踏み入れたことのない路線だが、敢えてこちらに行く用事が見当たらないので、割り切ることにする。そして、以前の旅で取りこぼしている新函館北斗から函館までの間の駅を確保した。五稜郭駅までは、北海道新幹線が開通するよりもかなり古い時期に、ずばり五稜郭を目指してやって来たことがある。もっとも、現在の車内放送を聞く限り、五稜郭に用の向きは、函館駅まで行くようにもアナウンスされている。五稜郭駅は五稜郭の最寄り駅には違いないが、結構距離があるうえに駅からの足に難があるため、普通の旅人には函館駅前から出ている路面電車が推奨されている。今回の主要なターゲットとなるのが、この函館市電である。領域面積ベースで言うと、北海道の9割がたの駅を取ったようにも思えるが、数値上その割に未取得の駅が多いのは、函館市電の電停が手つかずとなっているためだ。

kamuy27.jpg 函館駅前から、まずは湯の川行きの電車に乗る。ありがたいことに、メジャーどころの交通系ICカードを使うことができる。観光地として有名な函館市内でも、この奥まった地域にはそれらしい名所・旧跡の類はないと思っていたのだけれど、実際現地に足を運んでみると、トラピスチヌ修道院の最寄り駅(電停)ということになるらしい。後は、函館空港も近いと言えば近いが、空港に降り立ってそのまま市電に足を運ぶ、あるいはその逆という使い方は考えづらい。基本的には、市民の生活の足として利用されるものなのだと思う。そこから、真逆にあたる函館どつくに向かう電車に乗る。なんだか引っ掛かりを覚える名前だが、船のドックを意味するのだろう。観光地函館らしいエリアはむしろこちらなのだけれど、ちょっと全路線を走破する時間的な余裕がない。十字街の電停から谷地頭までの電停をレーダーで取った後、末広町まで進み、やはりレーダー。形の上で函館市電制覇とした後、十字街までは歩くことにした。今後、駅を気にすることなく北海道を旅できる時が来たら、函館の主要観光エリアであるこの界隈を改めて歩いてみようかと思う。

kamuy26.jpg 函館駅まで取って返す。函館駅から、新幹線の始発駅となる新函館北斗駅まで、そんなに距離があるわけではないのだけれど、行き交う列車の本数がそんなに多くないのが辛い。ぎりぎりの時間というわけではないが、予定の新幹線に間に合わせるためにはさほど余裕のないタイミングで函館駅に戻った。最後に、駅で土産物を買う。もう少し時間があったら、クレイジーピエロとかそんなハンバーガー屋にも行ってみたかったのだが、そういう余裕を作れないのが駅取りの旅の辛いところである。手早く、買うものを買い、新函館北斗から名古屋までのきっぷも用意し、新函館北斗駅に向かう。北海道フリーパスの出番は、これが最後となる。いろいろ活躍してくれたこの切符だが、さすがに新幹線に乗ることはできない。

 12:48、東京行きの新幹線はやては、新函館の駅を出発した。函館の市電をコンプリートして北海道制覇は成ったかと言えば、実はそうではない。最後の難関が残されている。北海道攻略有数の難所として有名な、江差線(廃線)である。新幹線の駅としてその名を残す木古内から、日本海に面する江差の町までを結んでいたこの区間は、2014年に廃止された。江差線自体は五稜郭駅から江差駅までを結ぶ路線だったが、北海道新幹線の開業に伴い、木古内駅から五稜郭駅までが道南いさりび鉄道に移管された。後者についてはゲームデータ上も江差線として残りつつ、実際には道南いさりび鉄道を乗り通せば自動的にクリアできるものだ。

 とにかく多くのプレイヤーを悩ませてきたのが江差周辺の廃駅である。現存する路線で言うと、木古内の南の北海道新幹線経路上から江差線知内駅(廃駅)を取ることができ、これがレーダー使用を狙う場合に最も、江差駅に近づけるタイミングなのだが、それでも基本的には、江差駅までは射程が足りなかった。となれば後は、江差方面に向かう路線バスを使うか、イベント期間限定でレーダー射程が伸びるタイミングを当てにするかぐらいしか攻略の方法がなかったのだが、少し前にレーダー射程を一時的に伸ばすアイテムが追加されたため、私はこれをありがたく使うことにした。これにより一気に江差線攻略の難易度は下がったのだけれど、知内駅が取れるのは、トンネルが途切れる一瞬のタイミングだけなので、電波やGPSの状況によっては事故が起こり得る。これだけは実際現地に行ってみないことにはどうなるかわからないし、万が一このタイミングを逃してしまうと、後は最低でも津軽海峡の向こうの奥津軽いまべつ駅まで運ばれることになる。そうやすやすとリトライできるものでもない。

 祈るような気持で、木古内駅を通過し、知内決戦に挑む。北海道新幹線に乗るのなどこれが二回目なので、どのタイミングで知内駅が取れるのかはわからず、とにかくボタン連打。そして、知内駅を取れた。一応スキルも重ねがけし、万感の思いで江差駅の方向にレーダーを撃つ。北海道制覇は、これにて達成された。ちなみに、青函トンネル内は最近になって電波が通じるようになった。電波が通じることと位置情報を正しくつかめることとは全く別の問題であることは地下鉄が証明しているが、特に木古内側から青函トンネルに入った場合、トンネル内でチェックインボタンを連打していれば知内駅を取れる可能性も少なからず残されているため、その意味でも江差線攻略の難易度は下がっていると言える。

 これで一大事業を成し遂げたが、もう一つ二つ、やり残したことがある。春の旅行の時に取りこぼした青い森鉄道とIGRいわて銀河鉄道の制覇。これらは以前に乗ったことがあるので、アイテムで取って済ますことにしたのだった。八戸駅からいわて沼宮内駅までの間で、新幹線がトンネル外に飛び出すたびにレーダーを使い、これら二路線を取ることにも成功した。とにかくこれで、肩の荷が下りた気はする。北海道と青森のやり残しも片づけ、後に残るは青森県以外の東北地方、関東地方、中国地方、福岡県、大分県、熊本県と言ったような情勢となった。実を言えば関東以外は落穂みたく各県数路線ずつ残している程度の状況なので、全駅制覇もかなり近づいてきているはずだ。関東だけで1000駅弱を残しており、深い東京の地下鉄や、どの程度の乗り継ぎ難度なのかよくわからない私鉄路線などが勝負のカギを握ることになりそうだが、ここまできたら後は走り切るだけである。

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