裏銀座計画

 裏銀座縦走路とか呼ばれるものは、北アルプスの主稜線うち、長野県大町市の山奥の七倉ダムから、野口五郎岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳に双六岳と言った山々を経由して槍ヶ岳に至るコースのことを言う。安曇野に面し、そのため構成山群の知名度も高いもう一つの縦走路を表銀座というので、それとの対比で裏の名に甘んじているのだと思われる。コースのメリハリという点で、表の方が割と緩急に富むのに対し、裏の方は比較的なだらかな山容の山を結んで歩くことになるという。コース延長で言うと裏の方が長いが、表の取り付きとなるのが合戦尾根なら、裏の取り付きはブナ立て尾根で、ともに北アルプス三大急登に数えられる登山道なので、道のりの厳しさはどっこいどっこいと言ったところか。ちなみに、三大急登の中でも剱岳の早月尾根が別格級に厳しいのは動かしがたいとして、私の中では似たり寄ったりの合戦・ブナ立よりも、この間行った笠新道の方が頭一つ抜けて苦しい登りなのではないかということになっている。

 まだ実現するかどうかはわからないが、何となく挑んでみたい気持ちが高まっている裏銀座というのは、およそこんなコースである。行くとなると、これまでで最も長い山行になるのは間違いないので、実現にこぎつけるまでにクリアしなければならない課題は多い。

◆スケジュール問題
 一般に、裏銀座は3泊4日かけて歩くコースとされる。2泊3日コースとされる表銀座よりも1日長い。超人的に足が速いとか、その逆で極端に脚が遅いとかでない限り、道中の中継地点となる小屋の配置からして、大体こんなところに落ち着くようだ。
 遊び惚ける私の活動記録みたいになっているこのブログではあるけれど、私もこれで宮仕えの身である。連続4日の休みなどそう簡単に取れるわけではない。だが、今年はまことに都合の良いことに、7月に4連休がある。23日~26日まで続く休みがそれで、23日は海の日である。恒例となっている天邪鬼海の日登山も兼ねられて都合が良いとも言えるが、梅雨が明けきるか明けきらないか微妙な時期の休みとなるのは、いつも通り気がかりとなるところだ。当日の天候もさることながら、体力作りに課題を残しそうなタイミングではある。まあ日程的には、4連休プラスお疲れ休み1日の5連休にして、天候に恵まれず足止めを食った場合や途中離脱を余儀なくされた場合の保険としておくぐらいが良いのかもしれない。
 ちなみにこの連休、オリンピックの開会式に引っ掛けた休みらしいが、オリンピックそっちのけで山に行こうと考える非国民は一定数いると思われるので、小屋の混雑も気にはなるところ。表に比べて人が少ないと言われる裏銀座ながら、混雑度合いはお盆並みと言ったところだろうか。裏銀座のお盆がどんなものなのかは知らないけれど。

◆アクセス問題
 ブナ立尾根へのアクセスに使える公共交通機関は存在しない。JR信濃大町駅前からのタクシー利用が一般的で、料金は1万円弱、所要時間は40分ほどといったところになるようである。ここは結局、そうするしかないので金で解決することになりそうだが、大町までどうやって行くかという問題もある。ベストの選択肢は、大町駅前あたりの宿に前泊して翌早朝から出発する方法だろう。問題は、大町駅前にそんなに宿が多くなさそうだという点。早めの方針決定と予約を求められるので、ぎりぎりまで日和っても帳尻の合いそうな上高地周辺の山への登山とは事情が異なる。さらに前泊の場合、名古屋から大町まで鉄道で行くだけのことに半日程度の時間を要するので、山行本体の所要日数に加えてさらに休暇が必要になる。
 最大限休暇を取らず速やかに登山を開始しようとすると、大町までの移動は夜行バスに頼らざるを得ない。が、残念ながら名古屋から大町に行く夜行バスは存在しない。首都圏や京阪から走っているさわやか信州号は、大町駅前にも止まるようである。
 京阪便は、白馬岳に登った時に使ったのと同じ便なので、たぶん京都駅の八条口から日付が変わりそうなタイミングで出発する。これだと、登山開始前日の定時後に京都へ向けて出発するとして、その足に在来線を使っても余裕で間に合うことになる。新幹線だと楽だが、時間が余ってしまう。一番都合が良さそうなのは高速バスだが、京都行の高速バスは19時台が最終のようなので、これに乗るのは少々厳しいものがある。
 対するに、東京発の便は、バスタ新宿から出発する。出発時刻はそれなりに遅いようだが、結局のところ新幹線を使わなければバスの出発に間に合わない。まずバスに乗るまでの経費を考えると、京阪便の方が現実的である。
 なお、窮余の策として上高地から大町に向かって歩く方法もなくはないが、これだと未踏区間に入るまでに1日歩かなければならず、天候の悪化その他の要因により途中で山行を切り上げる必要が発生しても、双六岳以降の二日間歩き通し区間で撤退できないという問題が着いて回る。また、大町側に下山後使えるお風呂が見当たらないのも考えものだ。

◆駅問題
 山中で取れる駅など限られているのだけれど、実はあのゲーム、連続ログイン日数を記録している。記録が途切れたからと言って進行に致命的な支障が出るわけではないが、ここまで1日も欠かさず続けてきたものが途切れるのも残念なので継続していきたいところ。一応、入山前(初日)、野口五郎小屋付近(2日目)、槍ヶ岳小屋付近(3日目・4日目)とつなげば山行中でも連続ログインは切らさずに済みそうである。ちなみに手元にあるドコモの山岳通信エリアマップ(2019年版)によると、コース上の小屋で電波が入るとされているのは野口五郎小屋、水晶小屋、槍ヶ岳山荘の三か所。そのほか、道中途切れ途切れに通信可能エリアが出現するものの、大まかに見て鷲羽岳~三俣蓮華岳~双六岳の領域は、通信不能エリアの方が長いようだ。

◆体力問題
 これはもうそのまんまである。というか、もっと先に問題にされてしかるべき部分なのだが、今回の山行はかなりタフな体力勝負となる。ざっくりと計画を立ててみた限りでも、コースタイム通りに行って1日の行動時間が9時間余りとなる日がある。また、初日は行動時間こそ8時間程度となるものの、ブナ立尾根を登り切ったあとしばらく歩く野口五郎小屋までは歩きたい思いがあり、これを実現しようとするとなかなか厳しい行程となる。数値データだけで言うと、槍ヶ岳に登った時や笠ヶ岳に登った時とさほどの違いはなさそうということにはなるが、長丁場なので全体行程に余裕を持てる程度の体力はつけておきたいと思う。特に、高山病症状を緩和できるようなトレーニング方法があれば、ぜひ採用したいと思う。

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