大きな山を探そう

 行者小屋に空き巣が入ったのだそうである。例年ならゴールデンウィークの営業に入っていた時期だろうが、最近の風潮に従い、営業を自粛していたら、そこをやられたということらしい。なるほど、山小屋なら警備装置の類が発報したとして、警備員とかいった人たちが現場に駆け付けるまでは何時間かかかるだろうから、それを見越しての犯行ということなのかもしれない。しかし、休業中の小屋に盗るに値するほどのものがあるとは思えない。使い込まれた日用雑貨がせいぜいだろうから、それを狙って何時間も山道を歩くというのは、コスパの悪い窃盗というほかない。

 このことが影響したのかどうかは定かではないが、行者小屋や、私も泊まった赤岳鉱泉は、今期の営業を基本的には取りやめると決定したようである。事態が収束に向かえば、予約客を相手に細々と営業する可能性を匂わせているけれど、首都圏から近い上に比較的容易に登れる位置にある小屋なので、早々に予防線を張ったということなのかもしれない。そして予防線ということで言うと、毎年初夏に開催されている夏山フェスタ中止の断も下ったようである。

 なんだか、少しずつ外堀が埋められている感じがする。私自身は裏銀座をあきらめていないけれど、関連するところの営業が危うい。さわやか信州号は、京阪上高地線がすでに7月21日までの運休を決めている。狙っているのは7月22日の京阪白馬線(大町経由)なのだが、こちらについては詳細が公開されていない。首の皮一枚つながったと言って良いのかどうかも定かではない。予定コース上の小屋(野口五郎小屋、双六小屋、槍ヶ岳山荘)は、ゴールデンウィークの営業取りやめを言っていたりいなかったりするが、どこも今のところ夏山営業について特段言及していない。

 こんな時節なので、夏山シーズンになっても長い縦走を避ける判断に走る人が増え、かつ小屋の営業も例年通りとなればピンチをチャンスに変える展開につながらなくもないのかもしれないが、たぶんハイカーという人種にとって命とは投げ捨てるものであり、今さら疫病で死ぬことなど屁とも思わない命知らずも少なくないと思われる。覚悟を完了した者たちの集まる小屋泊まり前提の縦走路は、巨大な密室も同然だ。今後の展開次第では、裏銀座クラスターを生み出す土壌があると言って差し支えないのだろう。

 と言った次第で、裏銀座がつぶれた場合に備え、日帰り可能な大きな山を探している。結果として行き着いたのは、針ノ木岳、霞沢岳、北岳といった山々だ。この中で、北岳に日帰りしようとすると、真夜中に甲府を出発する必要に迫られる。そういうのに付き合ってくれるホテルが見つけられなければ、いろんな意味でやりたくない甲府駅ビバークも考えないといけなくなる。一泊を良しとするなら、奥穂リベンジもなくはないが、最近長野県中部を震源とする地震が多いのも気がかりではある。簡単に調べてみたら、震源を徳本峠付近としているものもあり、霞沢岳や槍穂高連峰は震源まで至近ということになる。焼岳につながる火山帯が云々ということまではないにせよ、落石の多そうな山域で、なおその危険性を増大させる要因は気がかりではある。後は盆地から登る霧ケ峰とか、立山周回とかも考えられなくはないが、いずれにせよ今後の成り行きを見守りたいところだ。

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