ドラゴンレール マロリー

 仙石線は、その名の通り仙台と石巻を繋ぐ路線である。ただ、意外なことにその始発は仙台駅ではなく、あおば通駅というのが始発・終着駅というようである。この、もろに仙台市内の地名という感じの駅名にたがわず、あおば通駅は仙台の市街地にある。2000年の3月11日という比較的後発の駅だったことから、高架と言ったような形で街中に駅舎を構えることもできなかったと見え、地下駅である。実は、宿の最寄り駅がここあおば通駅だったのだが、今日使う路線にそのまま通じる駅だという意識が全くなく、取得済みの地下鉄の駅だと思い込んでいたので、最終日のスタート地点は仙台駅となった。まあ、宿から歩いても5分くらいで仙台駅にはたどり着けるのだけれど。

 今日最初に乗り込むのは、仙石東北ライン女川行の列車である。何となくJR東日本感のあるこのネーミングに、昨夜不安を覚えて経由駅を調べたのだが、ちゃんと未取得の駅を回収できる路線であることは確認できた。石巻行きの列車は、最終的に石巻に行き着くとは言っても、途中まで東北本線を通ったり石巻線を走ったり、いろんな経路があるらしい。とにかく今回は計画が図に当たり、事故らずに済んだことに胸をなでおろした。首都圏なら注意を払うところだが、仙台近郊もこんなことになっていたとは。

 仙石線というローカル線風の名前に反し、石巻駅に着くまでは、列車は仙台市の郊外という雰囲気のところを走る。道中、再訪したい東北歴史博物館の最寄り国府多賀城駅とか、そのまんま日本三景の最寄り松島駅とか、観光対象となりそうな駅も通過するので、今後の東北旅でも使う可能性はあるし、心ならずも再訪することになりそうな大船渡線への進入経路としての利用も考えられるが、それでも今回で走破にめどがついたのに安心した。

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 対照的に、石巻から先の石巻線は海辺を走るずいぶんと長閑なムードの路線となっている。ただ、この地域の海辺というと、やはり東日本大震災の被害は免れ得なかったようで、終点女川駅が近づくにつれ、真新しい家並みが目に付くようになる。今回は、本当に行って帰るだけの女川への旅となってしまうが、もう少し腰を落ち着けて歩いてみたいような気持にさせるような、そんな風景が広がっている。いくら何でもそのまま折り返すだけなのはあんまりなので、一応駅の外に出て駅舎の写真だけは撮ってみた。女川駅は、終着駅によくある駅舎が線路を通せんぼする形の駅だった。古い駅舎も震災の際に失われており、新駅舎は西に200mほど移動しているようだ。旧駅舎は今でいうハマテラスのあたりにあったのだそうで、漁業の町らしく、港の鼻先のようなところに駅舎がある形だった。

 乗ってきた列車は、そのまま小牛田行きの列車になっていた。手っ取り早くてありがたい。一応、女川への義理は立てたのでそのまま乗り込む。車内には、結構な数の高校生が乗り込んでいる。あまり自覚はなかったが、そろそろ町が動き出そうかという時間だった。地方の高校生はとんでもなく早い時間帯から通学のため列車に乗り込むことも珍しくないが、彼ら彼女らはどこまで行くのだろう。やはり仙台方面まで通うことになるのだろうか。地元の高校となると限られてくるのだろう。大変そうだなと思っていたら、先に進むにつれ、どんどん高校生が乗り込んでくる。むしろ、まともな大人は数えるほどしかいない。この地域の大人は、ほぼほぼ地元で働き口が得られるということか。にしても、まさか18きっぷの旅でこんなに高校生ばかりの列車に乗り合わせることになろうとは。そもそも18きっぷが学生の長期休業期間に合わせて販売されているきっぷなので、古今未曽有のことだった。ことに今回は女子の方が多いので、一層いたたまれない。高校生の多くは石巻辺りでいなくなるに違いないとそう踏んでいたのだが、石巻駅にたどり着いて、ある程度数こそ減ったものの、いまだ車中には通学列車そのものの光景が広がっており、私のストレンジャー体験は終わりを迎えていない。さすがに居心地が悪くなってきたが、さすがにそこからさらに少し進んだ鹿又駅で若人たちは列車を降り、車内に平静が戻って来た。

 前谷地以降の駅はすでに過去の遠征で取っているので、淡々と進み、小牛田で陸羽東線に乗り換えた。決して有名とは言えないけれど、事程左様に一応この地域のターミナルとなっている小牛田駅で、列車の乗り降りをした記憶はほとんどない。東北本線を進む場合は、基本的に仙台と一ノ関を乗り換えなしで行き来できるせいなのだろう。ただ、少なくとも過去に二度は、この駅での乗り換えを経験しているはずである。奥の細道湯けむりラインの愛称を持つ陸羽東線は、その名の通り沿線に温泉地も多く、観光地もいくつかあるが、青年期の伊達政宗が居城とした岩出山城もこの沿線にあるため、その城攻め旅の時に乗っているはずだ。記憶も不確かだが、米坂線で新潟県から米沢に進み、そこから新庄、岩出山、仙台と進んだ気がする。乗ったことのある路線の常で、今回はごくあっさりと駅を回収しながら進む。

 以前に乗った時は、ぐずつく天気の夕方にこの路線を西に向かったと思うのだが、今日は何もかもが対照的だ。晴れ渡った夏空の下、鳴子温泉とかの温泉地の様子を眺めていると、そのまま温泉宿に逗留したい気分になってくる。が、すでに触れた通り今日は旅行最終日。そろそろ昼時も近づきつつあるこの時間帯に、帰途にも着かず、東北の田舎を彷徨しているというのは、いささかのんびりはしている。

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 11:10、新庄駅に到着。山形新幹線も停まる駅ながら、平日ということもあって駅はひっそりしている。ビジネスユースの客が多くあるほどの駅とも思えないし、観光客の姿もない。地元乗客もおらず寂しい限りだが、駅舎の中には地元のお祭りで出回る山車か何かの展示がされていて、ここだけは豪奢だ。また、「富樫仕事しろ」で有名な富樫義博氏がこの街の出身なので、富樫氏デザインのマスコットキャラクターの意匠があしらわれていたりする。絵柄的には、幽遊白書の初期のテイストがある。

 前回ここに来た時、ニューデイズの並び辺りにある蕎麦屋が結構いいらしいという情報をつかんでいながら、この店でそばを食えなかったので、今回は雪辱を期したかったのだが、何となく予想していた通りに臨時休業だった。となると、何が何でもそばを食いたくなるのが人情というものだが、この先進む駅は山形駅も含めて駅そば屋がない。帰り着くのは夕方近くになるが、どうしてもそばを食べたいなら仙台駅まで我慢するしかなさそうだ。

 というわけで、何となく満たされないものを感じながら山形駅へ移動。最後の課題である左沢(あてらざわ)線に乗るだけなら、一つ手前の北山形で折り返せばよいのだが、これという施設もなさそうだったし、山形駅まで移動し、飲み物や土産物を買った。

 この旅が終わろうとしている。が、駅旅としての東北旅行は、まだ完結を見なかった。次の駅旅は、大船渡線の落穂ひろいをするためのものとなりそうだが、それだけのために東北に来るのはもったいない。他の主題として何か考えられるものはないか。いや、それについてはすでに目星がつきつつあった。

 時間が迫ってきたので左沢線にホームに向かった。その名の通り左沢駅まで伸びるこの路線は、路線長は大して長くないのだけれど、列車本数が少なく、特に途中の寒河江から左沢までを走る列車がごくごく限られている。ここの実乗にこだわると、下手をすれば1日仕事になりかねないような不便さだ。他の方法として、路線バスの利用も考えたが、それでも解決策が見いだせなかった。幸か不幸か、寒河江まで進めば、その先の駅はレーダーで取れる。再びここにやってくることはないような気もするが、ゲーム上はそれで手を打つことにした。

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 ところが、列車に乗り込んでみて意表を突かれた。なぜか、車中のカーテンというカーテンが閉められている。ただ事ではなさそうな雰囲気があるのだが、地元民と思しきわずかの乗客は、そんな様子を全く怪しんでいる風ではない。とすると、左沢線ではこれが標準なのだろうか。しかし、そうする理由がわからない。この地域はサクランボの産地として全国に知られる。もしかして、果物をこの列車で運ぶために、直射日光除けのためカーテンを閉めているのではないか。日本全国津々浦々、カーテン全閉めの列車など、過去に一度も乗ったことがなかった。それほどの異常事態に気圧され、どうしてもカーテンを開けて車外の景色を眺めようという決心がつかなかった。そんなことに決心がいる日が、まさかやってこようとは。

 しかし、さすがに車両最前部と最後部、つまりは運転席部分にまではカーテンがついていないので、そこからは車外の様子が見える。ローカル線らしく、ゆっくり進む列車の運転席からまっすぐに伸びる左沢線の線路が見える。そしてまっすぐ伸びる線路のその先に見える山、蔵王山。遠ざかっていく。先ほど山形駅をぶらぶらした時に得た情報によれば、山形市内から山の上の方まで行くバスが出ているらしい。そして、何となく山形の山のイメージが強い蔵王山は、宮城県との県境に当たる山なので、仙台からのアクセスも難しくないという。今日は頭の方に雲がかかっているので、山の個性を表す稜線の形が見えないのだけれど、いつぞやもっと寒い時期にこの地にやって来た時に、雪をかぶった蔵王山を見て以来、あこがれる気持ちは持ち続けていた。

 そう、蔵王山に限らず東北にも名山の名に値する山がいくつもある。岩手山、岩木山、鳥海山、栗駒山…。それらのうちのどの山を選ぶことになるかはまだ何も決まっていないけれど、来るべき大船渡線回収旅行の際には、東北の山に登りたい。アルプスの高山と東北旅行は、決行の時期がバッティングする可能性が高いが、そこに山があるなら、やはり登りたいと思う。狙うなら来年の夏だろうか。

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 左沢線の駅としては比較的規模が大きいのだろう寒河江駅に着いた。左沢の方向に向かってレーダーを使う。射程が不足するようなこともなく、左沢線をすべて取ることができたのに満足し、そのまま山形に引き返した。そして、仙山線に乗り換えて、今日のスタート地点、そしてこの旅の起点仙台まで引き返した。帰りの新幹線の切符の買い方を間違え、危うく予定の列車に乗り遅れそうになったが、事なきを得、仙台駅出発からほどないところで、またもレーダーで長町南駅を取り、今回の旅で予定していた駅取りはすべて終わった。後には、ドラゴンレール大船渡線の未取得新廃駅だけが残った。

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