山登ってみよう【風切山・腕扱山】

kazekiri1.jpg

 新城市に桜淵公園というのがある。その名の通り、桜の名所として知られる。もちろん、名前がローカルニュース以外で取り上げられることもなく、全国区の桜名所というほどのことはないが、東三河の人は、花見をしようとなった時に、この地域に何カ所かある桜の名所の中からこの公園をチョイスすることもあるかと思われる。豊川中流域の、まさに渕というにふさわしい川沿いの桜は、やはりそれなりの見ごたえはある。

 何となく、この桜淵公園に行こうという気になった。より近いところにもっと有名な桜はあるものの、例年だと結構人出が多くて行き帰りの電車が大変である。だからと言って鶴舞公園や五条川だといかにもありがたみがないという、妥協の産物だった。それにしても、桜淵公園だけだと何となく押し出しが弱いような気がしたので、近くにある二つの山、風切山と腕扱山も一緒に登ることにした。山も山で大して有名でもない里山だ。山を始めた頃に参考にしていた「愛知の130山」に取り上げられた中で、この二座は長らく未着手のまま残っていたので、この機に取りにかかろうと思ったのだった。

 今回的にするのは東三河の少し奥まったところに位置する山である。アクセスに飯田線を使うところまでは同じであっても、本長篠以遠の山と違って、意外と遅いスタートでもほどほどの時間に駅までたどり着けてしまった。今回のスタート地点となるのは飯田線東新町駅。小さな駅ながら、意外なことに終日無人となる駅ではないようだ。下車時は駅員が配置されていなかったので、乗ってきた列車の車掌さんにきっぷを渡して駅舎を出た。

 田舎ではないけれど、9時ちょっと過ぎという時間帯のせいもあってか、人通りはほとんどない。駅の横の道を、そのまままっすぐ南に向かうと、10分余りで桜淵公園にたどり着いた。ちょっと心配していたところだったけれど、肝心の桜の花はまずまず見ごろと言ったところ。それを確かめつつ、桜見物は後回しにして豊川を渡り、山に向かう。「愛知の130山」では、ちびっこ連れ想定のもっとも易しいグレードの独立コースとして、二座が別々に紹介されているが、今日は二つまとめて登る。最初は登って降りる×2の山登りにするつもりでいたところ、YAMAPには縦走風の地図が収録されていたので、こちらを採用することにした。実際には、縦走というより、周回コースに近い。

kazekiri2.jpg

 先に狙う風切山の登山口は、桜淵公園より少し東側にある。まずは県道に沿ってちょいと歩く。歴史をさかのぼれば、別所街道というそれなりに由緒ある街道に源流を求められる道も、今は多くの車が行き交っている。ただ、歩道のあることがありがたい。ぼんやりと歩いていると、今では懐かしの奥三河名山八選風の指導標が立ってるのを見つけたので、そっちの方に進んだ。YAMAPを見ていても、確かにこっち方面に登山道があるらしい。

kazekiri3.jpg

 ところが、この安直な判断が失敗のもとだった。道は当初こそ登山道風の雰囲気を出していたものの、風切山本体に登り始める前に、山を下ってしまった。途中でカタクリの花など眺められはしたものの、とんだ肩透かしだった。下った先は、新城市老人福祉センターの駐車場になっていた。風切山周辺を散策するハイキングコースの位置づけらしい。そしてここから、改めて風切山の登山道が始まるようだ。気を取り直して進む。この福祉センターの近くには、立岩観音という観音様が祭られている。風切山も弘法山の異名を持ち、道中にはミニ霊場風に石仏が祭られている。思ったより、歴史のありそうな山だ。

kazekiri4.jpg

 今度は、ちゃんとした山道が続く。取り立てて厳しいこともないが、淡々と高度を上げていく。15分ほど登って、見晴らし台の看板が立つ広場に出た。なるほど眺めは良く、新城の街並みが、思った以上に遠くに見える。風切山は、これで一応356.4mの標高がある。山腹なら300m弱ほどの標高はあるだろうか。さらに15分歩き、風切山の山頂に立った。開放的な明るい山頂ではあるけれど、周辺の立木が微妙に伸びているせいで、見晴台ほどの眺望はない。それでも、かつて建てられた名山八選意匠の看板には、「山頂周辺の展望をお楽しみください」とある。一昔前は、木々の背丈がもっと低かったのかもしれない。

 何気にこれで、奥三河名山八選コンプリートである。調べると、これらの山が選定されたのは2005年のことだったらしい。えらく時間がかかってしまった。もともと、奥三河の8市町村(新城市・設楽町・東栄町・豊根村・富山村・津具村・鳳来町・作手村)の最高峰というコンセプトで選ばれた山だったのに、今では合併を経て、豊根村、富山村、津具村、鳳来町が消滅してしまった。それにより名山八選も、雲散霧消してしまった感じがする。風切山は、旧新城市の最高峰だったのだろう。

 山頂から少し引き返した。今回採用したYAMAP地図によるコースだが、実はぎりぎりまでやぶ漕ぎみたいな道となっている可能性を警戒していた。が、くだんのコースは、西登山口というのに通じるれっきとした登山道らしい。そこに、ちゃんとした道があった。これなら、進入するのに何の憂いもない。勇躍、示された道に進む。登山道はあっという間に終わり、舗装道路に出た。どうやらこの先、こんな調子の道が腕扱山の直近まで続くらしい。ちょっと拍子抜けである。多少色気のない道ながら、道中に桜が咲き誇り、一部展望の得られる箇所もあるなど、春のハイキングコースとしては悪くなかった。

kazekiri5.jpg

 そんな調子で、風切山山頂から40分ほど歩いたところで小さな池に行き着いた。重川池というらしく、公園風に整備されている。ここはもう桜淵公園の至近なので、同じ公園の一部ということなのかもしれない。ここでも桜が咲きほころんでいた。池の縁を歩いて、腕扱山の山すそまで進む。どこかすぐ近くに登山道があるはずだ。きょろきょろと辺りを見回すと、それらしき道があったので進んでみた。

kazekiri6.jpg

 散策路みたいなゆるい傾斜のその道を10分ほど歩いたところで、腕扱山の山頂に着いた。しかし、展望はない。かなり高さのある明治天皇立像が異彩を放つが、それ以外は至って地味な山頂だ。ガイド本を見ていた限りでは、もう少し歩きでのあるコースなのかと思っていたが、予想以上のあっさりコースだった。風切山と組み合わせて良かったと思う。

kazekiri7.jpg

 あっという間に山を下り、桜淵公園に戻る。なんだかんだで2時間ぶりくらいの帰還となった。2時間の間に、かなり観桜の客が増えていた。賑々しく祭りが開催されているでもなく、露天の類もない。それでも人は多い。一応、昨今の情勢にあっては、あまり好ましくない状況ということになるのかもしれないが、そんなケチがつくこともない日が一日も早く戻ってくることを切に願わずにはいられなかった。

kazekiri8.jpg

この記事へのコメント