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zoom RSS 山登ってみよう【導く三ツ瀬明神の鎖】

<<   作成日時 : 2017/07/04 21:54   >>

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画像 槍ヶ岳と言えば鎖。新田次郎の小説「槍ヶ岳開山」で、幡隆上人は、槍ヶ岳登山がもっとメジャーなものになるように、槍ヶ岳に鎖をかけるべく奮闘していたけれど、そのくらい切っても切り離せないものである。が、実際鎖を使えば険しい山にも容易に登れるようになるかと言えばそんなことはなく、むしろ岩場を登るのはちょっとしたコツと慣れが必要である。できれば事前に練習をしておきたいという思いはある。そんな時、最も近場のそれなりに本格的な鎖場のある山として思い至るのが三ツ瀬明神山だ。「山登ってみよう」を始めてからですらこれで三度目のアタックになるが、鎖や梯子のイメージをつかむ意味で、登っておこうと思った。

 三ツ瀬明神の山域は、この間の宇連山と近接している。ただ、二つの山の間は鳳来湖によって隔てられており、直線距離では近くても縦走をするような位置関係にはない。ただ、アクセスに使うのはやっぱり飯田線で、下車駅は宇連の時の三河槇原から二駅離れているだけにすぎない三河川合駅。名鉄を使う、新幹線を使うなどの方策を採れば行動開始はかなり早い時間帯にできたのだが、青空フリーパスの効用を最大限発揮するためにJRの在来線だけを乗り継いでいこうとしたら、登山口となる乳岩峡口に着いたのは10:15のこととなった。そして、後々これが祟ることになる。

画像 登山口近くの駐車場には多くの車が停まっている。全部が全部登山客のものとは思えない。乳岩散策や渓流遊びの観光客の車も多いに違いない。だが、渓流で涼むならいざ知らず、乳岩周辺をハイキングするには、今日の気温は暑すぎる。大体、午前6時過ぎに家を出た時点ですでに暑かった。天気予報によれば今日の気温は30度を超えると言っていた。まあ、そんな折に900mほども登る低山行に挑む方がよっぽどどうかしているのだろう。

画像 ちゃっちゃと登りに取り掛かる。今日の山行、梯子・鎖が8割と言って良い。それらがあるのは三ツ瀬登山口からの登山道と合流したさらにその先だ。まずは最初の経由地点となる鬼岩まで飛ばす。飛ばす…。飛ばす……。気持ちとは裏腹に、急に足取りが重くなってきた。体がだるいし、軽い片頭痛がする。あまり考えたくはないが、熱中症の初期症状と言う気がしないでもない。気温が気温で排熱が滞る中、頑張りすぎたのかもしれない。オーバーヒート気味だ。ぶっ倒れても仕方がないのでペースを落としつつも先に進む。この乳岩峡コースと呼ばれる道は前回も登っているが、行程が長めな上に登山口から山頂までの比高差も結構ある。全体としてだらだらと登り坂が続く印象だけれど、その序盤に位置づけられる鬼岩までの区間でこの体たらくとは。通常の半分くらいのペースで先に進む。やがて、道は再び渓流沿いに戻った。ありがたいことに水場が近づいたことで周囲の気温がはっきりと低くなった。しかも、道がちょっと平たんになった。再び顕著な登りが始まるまでに体勢を立て直せるとよいが。11:17、鬼岩前を通過。前回山行では登山口からここまでは45分で来ている。対する今日は1時間コース。苦戦である。季節が違うのもあるが、体力が衰えているのもあるのかもしれない。

 そんな風に思いつつ、鬼岩乗越に取り掛かる。標高が上がってきたり、その他諸々の要因がプラスに作用したためだろうか、体が楽になった気がする。5分ほどで鬼岩乗越と書かれた道しるべに行きついた。ただ、一番の難所となるのはさらにその先にある胸突き八丁である。今日のコースでは最大の激登りと言って良い。頭の中に思い描いていた像では鬼岩乗越が最大の難所だと思い込んでいたので、その胸突き八丁と言う名のギラギラした響きに一瞬たじろぐ。距離や時間にすればどれほど続く登り坂なのだろうか。一丁は100mあまりだった気がする。約1qの登り。短くはないが、先が見えないわけでもない。20分かけて登りきる。ちなみに、前回は15分で登っているので、3割り増しぐらいで時間をかけているのは鬼岩までと相変わらず。ここから三ツ瀬登山道との合流地点までは10分かからない。そこから先の山頂までがやせ尾根の道となっていて、数か所の鎖と一か所の梯子が配置されている。ちなみに、三ツ瀬から登ってくると、ここまでにも鎖かロープかがあったはずだ。

画像 やがて、今日私が挑むべき最初の鎖に到着。割とごつごつした岩場につけられている。岩壁自体の高さは4m〜5mほどだろうか。鎖はあくまで補助的に使い、基本的には岩場のくぼみに手や足をかけるという鎖場の心得を実践してみる。この岩は登りやすい。これまでは鎖に体重を預ける感じの登り方ばかりしていたが、確かな手ごたえをつかむことができた。そして、二度目の鎖。今度は10mほどの岩場に相応の長さの鎖がかけられている。が、こちらはつるんとした岩場となっており、フックも何もあったものではない。しかも苔むしているので余計滑りそうだ。何となく石鎚山の試しの鎖を思い出すが、こちらの鎖の形状はいたって普通である。どうしても鎖に体重を預けなければ登れそうにないが、逆に言えば腕の力で登ることはできそうだ。が、今回の山行はそれが狙いではないので、あえてその道を取る必要はないか。この鎖場の付近は、鎖のかかっていない部分が攀じる感じの岩壁となっているので、そちらを登った方が槍の練習にはなりそうだ。そこでそちらを進んでみる。

画像 登りきると間もなく梯子がある。これは、梯子に頼らないことには先に進めそうにない。登りきったところが、三ツ瀬明神のハイライトともいえるやせ尾根・馬の背だ。数年前にはここで死んだ人もいるので、一応褌を絞めてかかるも、この梯子はほとんど苦も無く登れた。上高地から焼岳に登った時の梯子に恐怖を感じたのが引け目となっていたが、考えてみれば焼岳のあれは山用の堅牢な梯子ではなく、華奢な脚立みたいなものだったので恐怖感をあおられたのかもしれない。まあ、あちらの高さが10mほどあったのに対し、今回の梯子はいいとこ5mもない。それにこういう梯子は登り切った後や下り始めるときに重心が不安定になるのが頼りないのだけれど、ここ三ツ瀬明神の梯子は、それとは別に上部に体重を預けるためのロープがつけられている親切設計になっているので、ちょっと趣が異なるのかもしれない。馬の背の上から鳳来湖を展望する。雨の少ない梅雨も半分ほどが過ぎようとしている中、ダム湖の湖底がのぞているところもある。この調子で、今度の夏は大丈夫なのだろうか。まあ、宇連ダムによってせき止められる鳳来湖は名古屋の水がめではないのだけれど。

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 最終盤、木の根が縦横に張り巡らされ、岩がごろごろとした斜面を登る。鎖・梯子が設置されている個所はごく一部だけれど、こういう手も使う感じの登りが多いところに、今日三ツ瀬明神を登った甲斐があったのだと思う。山頂に立ったのは12:37のことだった。1時間45分で登り切った前回と比較すると、30分以上の遅れが出たことになる。

 例の赤い展望台の上に立つ。霞んでしまっているが、南アルプスを望む展望台だ。前回はそんな山知識もなかったが、北は仙丈ケ岳あたりまで、南は光岳と言ったところまでは見えているのだそうだ。その連なりの中には、あの北岳も含まれることになるのだという。今見てはっきりそれとわかるのは、せいぜいが東栄町の中心部の街並みくらいなもので、それ以外は三遠南信の低山が茫漠として広がっているだけだ。

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画像 今回は速やかに引き上げる。登りで思いのほか時間を取られてしまったが、今日は前回の宇連山の時に見送った湯谷温泉に立ち寄りたい。スタスタと下山にかかる。今日の登りではそこまでの余裕がなかったが、やはり三ツ瀬明神は愛知県内ではトップクラスに位置づけられる秀峰なのだと思う。巨岩奇岩の配された道のりは変化に富み、柔らかな樹林に包まれる一方で要所では展望にも恵まれる。ことに乳岩協側からのルートは渓流美にも恵まれる。惜しむらくは快適な気候のシーズンに登らなかったことだけだろう。余談だがこの山域は、次第にヒルの生息域に飲まれつつあり、それは北側の尾籠方向から迫りつつあるのだそうだ。もちろん7月のこの時期はヒル真っ盛りの季節である。登るなら新緑の頃とか中秋とか、そういう時期のほうがこの山の持つ魅力を十分に堪能できるのかもしれない。考えてみればこれまでは、いつも冬枯れの季節にこの山に登っていた。

 三河川合の駅まで戻ったのは14:58のこと。あてにしていた電車には乗り遅れてしまった。つまり、温泉は今回もフイになった。それは途中からもはや覚悟していたのだけれど、シャレにならないのが今日の気候だ。たぶん濃尾地方に比べれば多少なりとも気温は低いのだろうが、30度を超えていることは間違いなさそうだ。残念なことに三河川合駅周辺には民家しかなく、避難所となる商店がないばかりか、自販機すら見当たらない。冷たい飲み物が欲しくてもそれを手に入れることもできない。駅前には大昔に廃業したと思しき旅館の看板?もあるのに。

 そんな中、かろうじて直射日光が遮れるだけの駅建物で次の電車を待つのは厳しいかなと思っていたら、直後に中部天竜行がやってくることがわかった。電車の中なら当然エアコンが効いている。手にした青空フリーパスを確認してみる。飯田線の乗り放題区間は飯田駅までとなっている。中部天竜まで意味もなく電車に揺られ、そこから折り返せばよいではないか。私の足は、やがてやってきた電車の乗車口に向かっていた。

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