旅に病んで(後編)

画像 来年のNHK大河ドラマは「西郷どん」なのだそうだ。正直言って、さほどの興味はない。本当に、大河ドラマは戦国と明治維新を繰り返し、その間に申し訳程度に平安・鎌倉・室町時代頃の題材を挟んでくる傾向が顕著なのに閉口するが、しかしまあ、また維新物の大河をやるという情報に接したのを一つのきっかけとし、今回の京都行では幕末維新にちなむ史跡を中心に攻めたいと思う。具体的には、無鄰菴、霊山博物館、八木邸である。

画像 そんなことを言いながら、無鄰菴は維新史跡とは言い難いものがある。維新のビッグネーム・山形有朋の別荘ではあるけれど、どちらかというと、日露戦争開戦前夜、明治末の外交方針を決する会議、いわゆる無鄰菴会議が行われたことで名高い。観光スポットとしては庭園が宣伝されることも多いようで、南禅寺とか平安神宮の近くに位置している。開場時間などの都合で、まずはここを目指した。

画像 最寄り駅としては、地下鉄の蹴上駅か東山駅かということになる。今回は蹴上からアプローチした。決してわかりにくい場所にあるわけではないのだけれど、かなり近づいても全くそれらしきものが見えてこないのに不安になる。実際、無鄰菴は表通りから一本奥に引っ込んだだけのところにあったのだけれど、もう少し閑静な場所にあるのだろうと思っていたら、車がビュンビュン行きかう幹線道路とくだんの庭園は、生垣1枚によって隔てられているに過ぎなかった。

画像 無鄰菴の庭園は、当然のことながら江戸時代の有名な作庭師によって作られたとかいう性格のものとかではないのだけれど、落ち着いたたたずまいの庭園で、小一時間ほどもぼんやり過ごすのには悪くなさそうな雰囲気だ。ただ、平日の早い時間帯、しかも決してメジャーな観光スポットでないこともあって来訪者の数が少ない。何人かが庭内を行き交ってはいるが、地下足袋をはいて芝の上を歩いているのを見ると、庭の保守を行う造園業者か何かのような気がする。そんな中で庭を眺めていると、自分がひどく場違いなものに思えてきそうだ。庭を一巡り、茶室などを見物した後は、その一角に建てられた洋館の中に足を踏み入れた。1階は現在の無鄰菴の管理に関する四方山について説明した映像展示なんかが行われていたが、二階は無鄰菴会議当時の状態にかなり近い雰囲気のまま、室内の様子が公開されていた。明治村あたりにこういう展示があってもおかしくなさそうだが、鎧戸が閉め切られているようで、やけに薄暗く、寒々しい室内だった。もっとも、こういう場こそ、密議をかわすのにふさわしいのかもしれない。



 無鄰菴からは霊山博物館を目指す。青蓮院、知恩院、円山公園と抜ける、東山観光の黄金ルートを歩く。久しくこの道を歩いていなかったので、30分くらいかかるかと思っていたら、考えていたよりは早く、博物館近くに行きつくことができた。意気揚々と最後の坂道を登ろうとして、何の気なしに傍らを見ると、霊山博物館の看板には「本日休館」の四文字が。まあ、そりゃそうだ。文化施設の類が月曜日に休むのは天地開闢のころから続く伝統みたいなものに違いない。

 となると、あとは最後に八木邸を向かうのみだ。手持ちの観光ガイドによれば、東山安井のバス停から四条大宮辺りまでダイレクトに移動できそうな感じではあるけれど、河原町まで出て四条通沿いに東西移動するだけの方が、通過路線が多そうな気がするので、今日朝一番以来の祇園を通り抜けて、河原町に向かった。そしてそこから、壬生寺道バス停へ。八木邸や壬生寺など、新選組にゆかりの旧跡はわずかに南である。壬生寺は、今では普通のお寺と言う雰囲気に落ち着いているが、芹沢鴨暗殺事件の舞台となった八木邸は、以前訪ねた時に受けた印象だと、何となく横死を遂げた鴨の無念の思いが澱んでいそうな感覚を覚えたものだ。ただ、それ以上に問題に思うことがある。この旧宅、隣にある和菓子屋さんで拝観の受付を済ませる必要がある。このお店がほかならぬ八木家の子孫だということだが、要するに入口が普通の観光地っぽくない。それに前回来た時の感じだと、ガイドの人に伴われながら邸内に入り、一通り説明を受けた後、和菓子屋さんでお茶とおやつをもらう流れとなっているような気がする。タイミングが合えばそれでよいのだけれど、さっきの無鄰菴みたく、私以外訪問客がいない中でのその流れだと、気を使うことおびただしそうだ。少しくらいはほかの観光客がいてくれればよいが。そう考えながら八木邸の前まで行くと、見事なまでに観光客の気配がなかった。気後れし、邸内の見学は、あきらめることにした。

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