8年目の春に・その8

 もともとの予定だと、この旅の最終日は秋田内陸鉄道を走破したのち、盛岡まで抜け、IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道で八戸まで進んだあと、東北新幹線と東海道新幹線を乗り継いで帰る計画となっていた。これで初日にわずかの取り残しがあった青森県をコンプリート出来るし、二日目に大館からレーダーを撃ったのも、奥羽本線鷹巣駅から秋田内陸鉄道に進む方針を決定した上で、取りこぼしとなる鷹巣‐大館間を繋ぐ意図があった。が、男鹿駅でのニュースを受けて情報を収集した結果、どうも最終日は仙台方面が春の嵐に見舞われることになりそうだった。しかもそれは、進行方向となる関東方向から北に駆け上がってくるのだという。当初の計画は、列車の運休など、トラブルに見舞われる可能性が高い。悩んだ結果、当初の計画を捨てることにした。

 考えられる経路はいくつかある。簡略化された路線図が手元になく、東北地方の路線網にも疎いため、概略を思い描くだけの物ではあるのだけれど、まずは秋田内陸鉄道を取った後、あるいは最初から内陸鉄道を捨てて、山形に回る方針。内陸鉄道を捨てたとしても、前回取りこぼした秋田県内の微妙な廃駅をレーダーで回収できるという利点はある。が、山形新幹線に進むと、結局は福島に入ったところで荒天に巻き込まれてしまう可能性がある。となると、新潟から上越新幹線で東京に抜けるルートか、さらに安全策を取るなら上越新幹線から北陸新幹線に乗り換え、長野から特急で帰るというルートも考えられる。で、内陸鉄道を取るなり奥羽本線を山形まで抜けた後から新潟に進めれば万々歳だったのだが、さすがにこれは無理があると分かり、羽越本線を新潟に向かうことにした。さりとて、内陸鉄道に変わる何かが欲しいという思いは偽れなかったので、最後には由利高原鉄道に寄り道していくという方針に落ち着いた。

画像 昨日の夜までその存在すらほとんど意識したことがなかった由利高原鉄道は、旧国鉄矢島線を継承した三セク線というようなことがwikipediaに書かれていた。有する路線は鳥海山ろく線の一本きりで、名前から察するにこれもまた憧れの山の一つである鳥海山へのアクセスルートであるようにも思える。その割にほとんどノーマークだったのは、これまで鳥海山へのアクセスルートとしては専ら酒田市側からの物ばかりを考えていたことによる。由利高原鉄道は、秋田県の南北ちょうど真ん中あたりの日本海側、由利本荘市の羽後本荘駅から始まって、内陸側に進んでいく。ここも盲腸線なので、沿線に用がない限りは乗ることのなさそうな路線ではある。その点では、ここに来る機会を得られたのは怪我の功名ということになるのかもしれない。秋田内陸鉄道では、阿仁マタギ駅近くにあるマタギ資料館に行ってみたいとは思っている。マイナースポットだが、そういう場所がある以上は、いずれまた足を運ぶことになるのだろう。

画像 由利高原鉄道にもう一度来ることはあるのだろうか。沿線にこれといった見どころもない水田地帯が続いているのを眺めながら思う。乗客は地元の高校生などが中心である。乗った列車はひな祭り仕様の観光列車で、整理券発券機には由利高原鉄道のマスコットキャラクターである秋田おばこが「えぐ乗ってけだな~」と愛嬌を振りまいていることから、観光利用の拡大にも結構力を入れていそうな雰囲気の路線ではあるのだが。そして今日も、終点の矢島駅までは進まず、道中の前郷駅で折り返す。後から無理やり突っ込んだ計画であるだけに、時間の都合上やむを得ないところなのだが、なんだか無粋という気はしないでもない。

 この路線は、有人駅がほとんどないことが特徴とも言える。どうも始発の羽後本荘駅、終着の矢島駅、そしてここ前郷駅くらいしか人がいなさそうである。折り返しの乗り換え時間のことを考えると、一つ前の曲沢駅の方が都合が良さそうではあったのだが、曲沢駅に至っては水田の真ん中にホームがあるだけの駅らしいことを調べ当て、漠然とした不安を覚えて敬遠したのだった。その結果、大館リターン張りの強引な乗り換えを決めることになったのだが、いかにも不審な挙動を見せる乗客の存在を前にしても前郷駅の職員は鷹揚だった。もちろん、羽後本性駅で往復切符は買っていたのでキセルの類ではないのだけれど。ちなみに、昨日の津軽鉄道も、この由利高原鉄道も、厚紙みたいな材質のきっぷを使っていた。専門用語では「硬券」と呼ばれるらしく、マニアに珍重されているらしい。
 羽後本荘駅に戻った後、しばし待つ。ここから先は、特急に乗り換える。その名もいなほ号というらしい。私の普段の行動範囲からして、スーパーいなばは聞くことがあるのだが、稲穂とはまた米どころらしいネーミングだと思う。

画像 いなほは、秋田駅と新潟駅を結んで走る。日本海側の有力二都市なので、そこを結ぶ路線羽越本線を走る列車は多そうに感じられるのだけれど、特急を除くと列車本数は多くなく、18きっぷの旅で新潟から秋田まで移動しようとすると一苦労することになる。今回は時間的な制約もあるので、おとなしく特急を使うことにするが、実は問題が一つ。羽越本線は厳密に言うと新潟駅と秋田駅を結ぶものではなく、鉄道がらみ以外ではさほど聞くことのない新津駅と秋田駅を結んでいる。新潟‐秋田を最短で結ぶ特急いなほは、新発田駅を通過した後、内陸側に引っ込んだ新津駅は経由せず、海側の白新線を通る。つまりいなほに通しで乗っても羽越本線をコンプリート出来ないことを意味するので、ここはまたレーダーで解決。ただ、このレーダーで取った5駅ばかりの区間を、実際列車に揺られて通ったことがあるかというとかなり怪しい。過去の旅行で、魚沼→新潟→会津若松と移動したことはあるのだが、その時の旅の記録を見る限り、明確に白新線を利用したことが記録されている。この区間に肉薄する数少ないチャンスだったと思われる旅がこの調子だと、恐らくそれ以外に新津‐新発田間を通過したことはないように思う。

 いなほは、定刻通りに新潟駅に到着した。列車を降りると、目の前に新幹線への乗り換え改札口があった。その展開の速さに、たじろぐ。実をいうと、今日は八戸か、場合によっては仙台辺りで職場用のお土産を買うつもりでいたのだけれど、それが流れたとなると、代わりになるのは新潟駅くらいしかないかと思っていた。在来線のホームから新幹線のホームへダイレクトに移動すると、そこは東海道新幹線のような簡単なりにおみやげを売っているような売店もなく、実用本位のシンプルなだけのホームが待っていた。やがてやってきた列車に乗り込むと、お土産問題に頭を悩ませ始めた私の目の前には大きな窓があった。ただ、上越新幹線と東海道新幹線は、こんなところも違うのだなあと思った。

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  • 8年目の春に・その7

    Excerpt:  11:09、五能線の旅本編が始まった。すでに触れた通り、途中で乗り継ぎ待ちのために2時間近い待ちが生じるのも併せて、この路線の終着である東能代駅に着くのは16:19のこととなる。何百kmと移動するわ.. Weblog: ディープ・ダンジョン~夕庵~ racked: 2019-04-15 21:32