寺と大根と私(後編)

 明けて翌日。初めに近鉄利用ありきの旅だけれど、近鉄で大阪から京都に行くのは少々効率が悪いので、最終的に北野白梅町駅付近を目指すことも踏まえて阪急と嵐電を乗り継ぐ。そしてたどり着いた北野白梅町の駅は、ちょっと見ない間にすっかり空が広くなっていた。

daiko1.jpg あらためて書くが、目的地は、以前にも行ったことがある千本釈迦堂こと大報恩寺。普段はさほど訴求力があるとも言えない渋めのお寺である。一応洛内最古と言われる国宝本堂や、おかめさんの逸話を遺す寺院ではあるけれど、観光地としては近くにある北野天満宮の方が圧倒的にビッグネームなので、どうしても影が薄い。しかし、今日は違う。お寺に近づくにつれ、お寺の所在を示す幟が現れ、お寺に向かう人、お寺から引き揚げる人が細い路地を行き交うようになってくる。

daiko2.jpg そして境内に入るや、黒山の人だかり。いきなり参拝者が列をなしているが、どうも先に大根焚き券を買っておく必要があるようである。列に並ぶのはそれからということらしい。ちなみに券の購入には1000円がかかる。観光ガイドなんかを見ていると、無料の炊き出しか何かと錯覚させるような書き方がされていることも多いが、この日使われるのは釈迦、観音、不動明王を表す梵字を書き込まれて霊力をドーピングされた神聖な大根のようなので、一杯あたりがかなり高価になるのは仕方がないことなのだと思うことにする。

daiko3.jpg ちなみに使われる大根は良く見る青首大根ではなく、丸い株のような形状の大根。たぶん聖護院大根である。実際にふるまわれる大根焚きは切り身状態の大根なので気づきにくいが、生大根として家に持って帰る用の梵字入り大根も売られている。ついでに調理済みの大根を持って帰るための容器も安価で売られてはいるが、これで調理されたものを名古屋まで持って帰るのはもちろん、聖護院大根を持ち帰るのもなかなか厳しいものがある。京都の冬の行事としてかなり有名になったとはいえ、本質的には比較的近所の人に向けて行われてきた年中行事ということなのだろう。

daiko4.jpg 境内には長蛇の列が出来上がっていたが、比較的回転は良いようで、さほど長い時間を待つこともなく大根にありつくことができた。床几に腰かけ、汁をすすり大根を頬張る。もともと大根と油揚げを醤油で煮付けただけの素朴な料理だが、そうであるだけに味に関してはハズレなしと言ったところか。ほぼ想像した通りの味だし、お寺の行事食にしては丁寧にだしを取っている…ような気がする。これに1000円払うのを良しとするかどうかは、もはや個人の価値観にゆだねるしかない部分ではあるけれど、年末イベントの参加料も込みの1000円と思えばそんなに悪くないのかもしれない。ちなみに、量はたっぷりとあってかなりお腹にたまるので、ボリュームについては値段相応なのかもしれない。

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